きまぐれ熊

セブンのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.3
初めて観たけど名作と言われるものはやっぱり観といて損はないんだなぁ

テーマやメッセージ性の所に行く前に、単純にラジオノイズ中心のオープニング曲が痺れる格好良さ
倦怠感溢れるエンドロールもサマセットの決意が感じられて超渋い

ラストのサマセットのセリフ、字幕でうっかり騙されかけたけど、
円満定年退職を一旦脇に退けて、もう一度戦う事にしたって終わり方なんだよね
字幕では「なんとかやってくさ」となってて、なんとなく騙し騙しやってくわ...みたいなニュアンスなんだけど、英語だとwhatever he knew,around...I’ll be aroundなので「ミルズが何を知ったとしても、俺はそばに居る」で意味が全然違う
つまり明確に決意を新たにしたって終わり
カッコいいっすねサマセット

当時、驚愕のどんでん返しって触れ込みだった気がするけど、7つの大罪どれが残ってるかチェックしながら見ていくと
最後に残るのが「嫉妬」と「憤怒」なので割と早い段階でジョンドゥが何をするのか分かってしまった
ただ、別にそれ自体はどうでも良くて、そこからメッセージを考えるのが面白いところだと思うんだよね
異常者だと決めつけていたジョンドゥにあっさり罪人に堕とされるミルズの姿とか、
明らかにジョンドゥと嫉妬で相似されているサマセットとか、
あったかもしれないミルズ(ステイシー)の生き方に嫉妬するサマセットとか、
様々に対比されていて示唆に富んでるのが良くできてるなぁと思う

多分ジョンドゥは明確な個人の存在だと受け取らない方がテーマに寄り添いやすいんだと思う

自分の身を守らない無敵の人ってマジで恐ろしいし、無敵の人ならいくら叩いてもよいだろうと叩き続ければいつの間にか自分も堕ちてしまっているかもしれない
ジョンドゥを異常者と断定し、目が曇ってしまった事で、自分がジョンドゥと同じ領域に堕ちていく事に気が付けなかった
そんな中で、唯一罪と戦い続けるのが、不安に絶望し早くドロップアウトしたがっていたサマセットというのが苦くて渋い
彼は罪と弱さを知っているからこそジョンドゥの滑稽な矛盾に気付けるのだ
あったかもしれない眩しい人生への嫉妬と戦いながら、クソみたいな世界でもう一度踏ん張るっていうラスト。いやぁいいっすね。
これが鬱映画?そんなバカな。

今ひとつピンとこなかったのは、この街で生きていくのは辛いとステイシーとサマセットが語り合う割には、街に対しての具体的な言及が一切ないんだよね
7つの大罪というデカいモチーフを持ってきてることからジョンドゥと同じように街=現世くらいの広い意味での世界の比喩って事でいいんだろうか
きまぐれ熊

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