みかんぼうや

セブンのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.4
【サスペンス映画の面白さを私に教えてくれた特別な映画は、20年ぶりに観ても全く色褪せない傑作だった!今後もこの呪縛からは抜け出せないと確信する。】

先日の「ペイ・フォワード」と同様、こちらも大学生以来、約二十年ぶり2回目の鑑賞。こちらもディテールはだいぶ忘れてしまっている作品だが、全体の流れは忘れていない。そして、「ペイ・フォワード」ではその衝撃のラストの展開まですっかり忘れていたが、こちらのラストは忘れない。いや、忘れるわけがない。あの白昼に行われる何もない鉄塔の下での全ての出来事を、約二十年前のたった一度の鑑賞にもかかわらず、その風景や画までとても鮮明に覚えていた。

本作は自分にとって特別な一作で、それまでいわゆるサスペンスというジャンルの映画をほぼ観てこなかった自分に、サスペンス映画の面白さの何たるかを教えてくれた、いわば“サスペンス映画の教科書”だ。と同時に、本作以降、他のサスペンス映画を観ると、無意識のうちに「セブンより面白いか?衝撃的か?」という一つの物差しになってしまった作品。

いや、この作品を基準にしてしまっては、そう簡単に出てくるわけがない、これより面白いサスペンス作品。それを分かっているけど、ついつい比較してしまう。抜け出せない“セブンの呪縛”。

しかしながら、先日の「ペイ・フォワード」の如く、思い出美化と記憶のすり替えが起きているのではないか、という一抹の不安があったのも事実。だが、そんなものは全くの杞憂だった。いや、むしろ展開や結末を知っていたせいか、初見の時には緊張感と恐怖に飲み込まれてしまい集中して観られていなかった細かいところまで、今回の再視聴ではよりクリアに観られるようになっており、サスペンス映画としてのクオリティの高さと面白さをより感じられたと言ってもいい。

7つの大罪になぞらえた設定とその後の展開、デヴィッド・フィンチャーの十八番とも言える“これから何が起こるか分からない”と思わせる不穏で不気味な空気感が絶えることのない映像と演出、若き日のブラピ、円熟期のモーガン・フリーマン、そして本作の犯人役で一気にファンになりしばらく一番好きな俳優であった某俳優(個人的に本作の不気味な演技が他の作品の演技と比べてもトップクラスに好きです)。どれもがたまらなく大好き。

猟奇的連続殺人の最初の事件の異様な殺人現場、次の現場に血で書かれた「強欲」のメッセージの時点で、“早く先を知りたい!”という映画鑑賞を楽しむうえで最も純粋たる欲求が刺激され、そこから全くもって飽きさせないテンポで次々と起こる殺人事件。予想外過ぎる犯人の登場シーン、そしてあまりにも衝撃的過ぎる7つの大罪を見事に完結させる結末。最初の掴みから最後の衝撃まで全く中だるみなく緊張感を途切れさせない2時間強。結末は既に知っているのにラストに向かうにつれて、抑えることのできない、自分でも容易に認識できるほど大きな音を打つ心臓の鼓動。

「セブン」を観た後、どれほどたくさんのサスペンス映画を観ただろう?しかし、未だに本作は抜きんでた存在であり続けるとともに、再鑑賞で結末を知っていてもこれほどの心臓の鼓動を味わえる作品はそうはないだろう。これはもう、今後何度鑑賞しようとも評価が揺るぐことのない圧倒的な傑作。そして、鬼才デヴィッド・フィンチャー作品の中でも「ゴーン・ガール」と本作はやはり別格(次点は「ファイト・クラブ」)。これからも彼の新作は追い続けます(最新作「The Killer」も楽しみ!)。
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