七つの大罪。
連続猟奇殺人。
不安を煽るノイズ音。
続く緊張感。
予測不能な展開。
間違いなく生涯ベスト5に入る映画。
特に監督で映画を観るわけではないが、
ふと思い返せば全て観ていたフィンチャーの
“色”を初めて知った作品。
観るものを否応なしに作品に引きずり込む
オープニングから世界観、映画全体の雰囲気
は一貫して鬱々としている。
また、その世界観を構築する美術、特殊メイク
は細部にいたるまでこだわりが感じられる。
それは、ミルズとサマセットが一連の事件に
のめり込んだように、観客のこの映画への
没入を容易にした。
すぐに現出するミルズの若さ、
サマセットの老練。
赴任したてのミルズ、定年直前のサマセット。
この設定だからこそ、物語は活きる。
後味が悪いとか、どんでん返し系だとか、
衝撃のラストなどと紹介されることが多いが、
決してそれだけではない怪作。
犯人役を簡単に悟られないようにするために、
オープニングクレジットでケヴィン・スペイシー
の名前を出さないほどの、作品に対する
フィンチャーの徹底ぶりには舌を巻く。
雨で濡れる街で始まった一週間は、
渇いた荒野で終わる。
「ハッピーエンドはない、絶対に」
そう言ったサマセットにもここまでの結末は
予想できなかった。
ミルズを見送った彼は何を想い、
この先どう生きていくのだろうかー。
地下鉄で揺れる、笑い合ったあの部屋。
あの団欒をもう一度。