YYamada

セブンのYYamadaのレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.0
【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
 ◎: 観客の緊張感を煽る
 ○: 超常現象なし

◆作品名:
セブン (1995)
◆サスペンスの要素:
・猟奇連続殺人事件の阻止

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・退職を間近に控えたベテラン刑事サマセットと若手刑事ミルズは猟奇連続殺人事件の捜査にあたる。犯人はキリスト教における7つの大罪に基づいて殺人を繰り返していることが明らかに。やがてサマセットとミルズは容疑者を割り出すが、その人物に逃げられ、さらにミルズの素性が知られていたことも発覚する。そしてさらなる殺人事件が続いた後、驚愕の事態が…。

〈見処〉
①サスペンス映画の金字塔!
 フィンチャーによる元祖「胸糞映画」
・『セブン』(劇中表記:"Se7en")は、1995年に製作されたサスペンス・スリラー。
・監督のデヴィッド・フィンチャーは、本作が長編映画監督2作目となるが、監督デビュー作の『エイリアン3』(1992)における製作会社との対立や、批評家による酷評により「新たに映画を撮るくらいなら、癌で死んだ方がマシ」と意気消沈。約2年ほど映画製作に関与さえしなかった期間に、タワーレコードNYの元店員アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーが書いた本作の脚本が目に留まり、脚本の一部リライト権利の確保を前提に、フィンチャーは監督に就任。
・本作は「ハリウッド作品史上、最も無慈悲な映画」と称されるほどのストーリー展開に加え、先鋭的なオープニング・クレジットや、「ブリーチ・バイパス」と呼ばれる「銀残し」を多用したコントラストの強い独特のビジュアルにより、数多のサスペンス映画のなかでベストワンに推されることが多い「傑作中の傑作」。その背景には、「汚い、暴力、倫理の欠如といった、憂鬱にさせる表現を、視覚的にそして文体的に描写したかった。」と語るデヴィッド・フィンチャーの感性とフラストレーションがあった。

②七つの大罪
・本作は、キリスト教の「七つの大罪」をモチーフにした連続猟奇殺人事件を追う2人の刑事を描いているが、ネタバレにならない程度に、本作の犠牲者について触れておきたい。

1️⃣ 暴食(GLUTTONY)
・被害者:肥満の男
・被害:内臓破裂により死亡
2️⃣ 強欲(GREED)
・被害者:弁護士
・被害:腹部への殺傷により死亡
3️⃣怠惰(SLOTH)
・被害者:廃人寸前の男
・被害:長期間ベッドに繋留められ、
 廃人に
4️⃣肉欲(LUST)
・被害者:娼婦
・被害:陰部への殺傷により死亡
5️⃣高慢(PRIDE)
・被害者:女性モデル
・被害:顔を切り裂かれ、睡眠薬で
 自殺を選ばさせる
6️⃣嫉妬(ENVY)
・被害者:ネタバレ防止
・死因:ネタバレ防止
7️⃣憤怒(WRATH)
・被害者:ネタバレ防止
・死因:ネタバレ防止

・なお、上記1️⃣~7️⃣による死亡者は5人であるが、本作鑑賞者は、計7人の命が失われていることを「認知」しているはずだ。

③ジョン・ドウ
・本作の犯人「ジョン・ドウ」は、日本語でいうところの「名無しの権兵衛」を意味する(女性の場合はジェーン・ドウ)。いわば「どこの誰だかわからない奴」として『プリディスティネーション』(2014)など、他のサスペンス映画でも登場するネーミングである。
・本作の脚本の凄いところは、本作の犯人は、名前はおろかその動機まで、彼に対する情報が一切語られないこと。劇中でモーガン・フリーマン扮する老刑事が「奴が本物の悪魔なら納得するだろう」と語っているが、あながち間違いではないかもしれない。
・なお、本作で「ジョン・ドウ」を演じた某アカデミー俳優の名前は、当人とフィンチャー監督の意向により、オープニング・クレジットに登場せず、代わりにエンド・クレジットのトップに表示されている。

④結び…本作の見処は?
「クソ監督」の汚名を一作で覆した、フィンチャー監督の代表作。
◎: 本作鑑賞者が決して忘れることが出来ず、健全な精神の持ち主が描けると思えない、映画史に残る凄まじい胸糞ストーリー。
◎: クライマックスの場面におけるブラッド・ピットとモーガン・フリーマンによる魂の演技は、本作のアカデミー受賞はなくとも、2人のベスト・パフォーマンス。
◎: 本作オープニングの映像センスは、25年経った今でも先鋭的。
YYamada

YYamada