三樹夫

ヘザース ベロニカの熱い日の三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

この映画の根幹にあるのは、カースト上位の気にくわねぇ連中をぶち殺してやりたいというのと、学校を爆破してやりたいという怨念だ。俺は高校生の時はショットガンでカースト上位の奴を吹っ飛ばしたかったし、学校を爆破する妄想もしていた(大学生になってもしてたけど。むしろ悪化したぐらいだが)。というより、サイレントマイノリティ的に、こういうこと考えている奴は古今東西確実に存在するだろう。
こんな怨念やシニカルさと共に、この映画には80年代的なオシャレ感も混ぜ込まれていて、ファッションショーレベルで様々なバキバキの服を主人公が纏っていく。服装に関しては映画的な演出だと思うが、欧米の学生の私服はイベントごとが無い限りTシャツジーパンのイメージしかないし。80年代は違ったのかもしれんけど。

3人のヘザーというファーストネームの女の子の、所謂イケてるグループに何故か属していいようにこき使われてる主人公。転校生のJDに出会ったことで、グループのボスの飲み物に洗剤を混ぜ殺し、ジョックス野郎2人をゲイの痴情のもつれに見せかけて殺すことになる。
この作品には所々皮肉が顔を出し、例えば学校側が積極的にヒエラルキーをつくっていく姿勢で、チアリーダーとかフットボールのカースト上位クラブに入っている奴が死ねば学校を休校にする。どう考えてもクソ連中が死んだのに、そしてみんなクソ連中が死んだと思っているのに、死んだ後のコメントは個人の人格を賛美するような美辞麗句が並ぶ。こういう美辞麗句を主人公はくっだらねぇなと冷めているが、この映画が誰向けというか誰目線かというと、文化祭とかで盛り上がってるのを離れたところから冷めて見ているような奴であろう。
高校というのは歪んだ社会そのもので、だからこそヘザーが洗剤飲んで死んでも、第二第三のヘザー、つまりクソな奴(作中だとビバヒルの双子妹を演じていた人のヘザー)が生まれる。JDは高校を爆破しようとするが、爆破を思いとどまった理由は、君が巻き添えになるからというものだ。ここらへんは、『魂のゆくえ』で主人公が爆弾テロを思いとどまったのと同じ。何かを爆破しようと考えた時に、その人がそばにいるというので爆破を思いとどまる、ただそんな人に出会うのが難しいけど。
学校に向けられる嫌悪は、いじめられたからとかじゃなくて、歪んだ社会を許すことができないからだ。俺は高校時代に戻りたいとかいう人間を心の底から、こいつ頭わいてんじゃねぇかと思っている。
三樹夫

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