西田千夏

愛してるって言っておくねの西田千夏のレビュー・感想・評価

愛してるって言っておくね(2020年製作の映画)
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「愛してる」という言葉が必ずしも
恋愛を意味するものではない。

本作は、台詞がなく絵本のような
アニメーションタッチで描かれた12分間のショートフィルム。

『絵本のような』と表現したものの、
本当の絵本のように背景があって、
色があって…ではなく、
基本は白黒で描かれていて、必要最低限の背景しかえがかれてません。

色と言ったら、娘のTシャツ、夕焼け、
10歳の誕生日を祝うキャンドルなど、
思い出を表すような、強調したいものには色が付いています。

そしてもう1つ。学校に飾られたアメリカの国旗。
思い出に関わるわけではない、国旗がなぜ
色が付いているのか。

最後に生きた場所が学校だからなのか。
それとも最後に見た物が国旗だったからなのか。
触れたもの、指したもの、その場にいたからなのか。
色々と想像が出来るところ。

でも、最後に色の付いた場面が思い出とは、
何も関係ないアメリカの国旗というのには
少々心残りがあるところ。

「銃が怖くてアメリカ行けない」や
「一般市民から銃で撃たれる」など銃に関しては男女問わず高校生も手にする程、
銃が当たり前となっている社会。

ただ泣かせにいくだけの話ではなく、
一般市民が武器を持つという銃社会への抗議や思いを感じます。

そしてもう1つ本作の重要部分と言ったら『影』。

登場人物の代わりに今の心境を表したかのような本人たちの影。

例えば冒頭の食事中での夫婦のやり取り。
夫婦の影同士会話をするも、本人たちは無言。
夫が顔を上げたと思ったら妻は下を向いたまま。
逆に妻が顔を上げたかと思うと父は席を立ったり、顔が下を向いたまま。

やり場もない感情を吐き出すことすら上手く出来ない。

今、1つの食卓で食事してるのに距離が遠い。
同じ家に居ても距離が遠い。

King Princessの『1950』
台詞はない分、出てくる劇中歌の歌詞に注目したい。

そして、記憶にもやや新しい
『Marjory Stoneman Douglas High School銃乱射事件』をベースにしたと思われる作品。


本作は1つの家庭が描かれていて、
「あ、1人しか死ななかったんだ」と思うかもしれませんが、実際には生徒、
教員合わせて17人が死亡する事態だった。

https://youtu.be/kd3BPZYZn7c

めちゃくちゃ覚えてるわけではないけど、
春休みの課題で世界のニュースをまとめるみたいな課題で丁度取り上げられていたので、
調べたのを覚えてます。 

その事件からアメリカでは銃への購入年齢制限が設けられた。
https://www.cnn.co.jp/business/35115434.html

動画にもあるように自分だけ生き残ったのが苦しくて自殺してしまったり、
精神的に追い込まれる程、心に深い傷を負うなど恐らく3年経った今でも癒えることのないものでしょう。

こういったジャンルの作品は、犯人や
警察側、被害者目線で描かれることが多いが本作では、被害者遺族の目線。

影になった娘に教えて上げたい。
あなたが死んだから、
あなたのせいで家族がバラバラになった訳じゃないと言うことを。







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