このレビューはネタバレを含みます
原題：If Anything Happens I Love You
公開：2020年
鑑賞：Netflix（字幕）
とても巧みで優れたアニメーション。影と光、光と影。たった12分、そのうち10分は涙で画面がぼやけました。
お父さん、お母さん、ひとり娘の仲睦まじい家族は、起きてはならない銃乱射事件によって破壊されます。
銃乱射事件が頻繁に起きるアメリカって怖いね！銃社会反対！平和な日本でよかった！と思考停止しないこと。ここ日本だって突然の事故、事件、災害、急病などあらゆる理由で家族や友人を喪ったり、命は助かっても魂を引き裂かれて苦しんでいる方がたくさん居ます。それは毎分毎秒減ることなく増えてゆく。このFilmarksにだって当事者もいらっしゃるでしょう。夢でその日に戻り「今日は行かないで、家に居て」と止めようとした方もいるはず。
街ですれ違う虚ろな顔の男性は
家族を殺されたばかりかもしれない。
駅のベンチで伏せて泣く女性は
子供を事故で亡くしたかもしれない。
気丈に振舞っているあのひとは
理不尽な暴力の被害者かもしれない。
和やかに笑っているそのひとは
大きな傷を隠しているかもしれない。
また明日ねとバイバイした友達とは
もう二度と逢えないのかもしれない。
幼い頃からそんなふうに周りを見る癖がついた私は、十代半ばにブッ壊れそうになり、その癖をなんとか振りほどきました。けれど今でも時々そんなふうに周りを見ます。だって、その可能性は捨てられない。
If Anything Happens I Love You
もし何か起きても、愛しているよ
1985年 御巣鷹山に散った日航機123便の乗客や乗務員が残した手紙が公開されています。錐揉みの機内で震える手でぐしゃぐしゃの文字で。申し訳ないけれど一度読んだだけで二度と開けなかった。残念なことに私の叔父は我が家に遊びにきた帰り、その123便に乗りました。
1995年1月17日 阪神淡路大震災でも、2000年9月11日 ワールトレードセンタービルでも、2011年3月11日 東日本大震災でも、2011年7月22日 ウトヤ島でも、2015年11月13日 パリ同時多発テロでも、この映画のモチーフとなった2018年2月14日 マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校でも、今も世界のどこかで、誰かが必死に命懸けで「愛している」を伝えようと、あるいは伝える隙も暇もなく…。
If Anything Happens I Love You
何が起きたって 愛しているよ
何か起きるその前に
すこしでも僅かでも
願わずにいられない。
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●King Princess - 1950
https://youtu.be/LNxWTS25Tbk
●邦題『愛してるって言っておくね』
この和訳意訳は好評のようですが、個人的にはしっくりきません。原語ニュアンス（娘の想い）を捻じ曲げている気がする。娘が何がなんでも伝えたい言葉は「愛してる」なのに、原語にない「言っておくね」の印象が上回ってしまう。「言っておくね」には伝える機会がないと諦めて悟っている感がある。それになんとなく90年代の人気ドラマ『愛していると言ってくれ』の語感に似せているのは考え過ぎかな。
●2分半のドラマ『Evan | Sandy Hook Promise』
映画『静かなる叫び』レビューでも紹介したもの。ご興味あればぜひ。
https://youtu.be/A8syQeFtBKc
紹介記事
https://gigazine.net/news/20161217-evan/
