ぶみ

おもいで写眞のぶみのレビュー・感想・評価

おもいで写眞(2021年製作の映画)
3.0
それを撮ると、あなたの人生が眩しく輝きだす。

熊澤尚人が上梓した同名小説を、同監督、脚本、深川麻衣主演により映像化したドラマ。
唯一の家族だった祖母がなくなり、メイクアップアーティストになる夢にも破れた主人公が、東京から地元富山に帰り、町役場から依頼された、お年寄りの遺影写真を撮る仕事を引き受ける姿を描く。
主人公となる結子を深川、結子の幼馴染で彼女に仕事を依頼する役場職員を高良健吾、高齢者が多く住む団地の住人を顧客としたホームヘルパーを香里奈、団地の住人を吉行和子、古谷一行が演じているほか、チョイ役ながら立ち飲み屋の大将役として井浦新が登場。
物語は、夢破れた主人公が地元に帰り、「おもいで写眞」と名付けた遺影写真の撮影を通じて、変化していく様を描くという、まさに邦画にありがちな内容を想像させるものとなっているが、本作の面白いのは、やはり「おもいで写眞」。
遺影を撮らないかとストレートに営業をしたところで、縁起が悪い等により断られていたところ、「おもいで写眞」と称して、それぞれ思い出の場所に連れて行き、そこで写真を撮るという企画としたあたりは、お仕事ムービーとしても楽しめるもの。
反面、その移動手段が、高良演じる役場職員の私用車というのは、現実離れしており頂けない。
ただ、その私用車が羅針盤をその名を由来とする日産・ラシーンであったのは、その羅針盤の意味を含ませたかった意図があったのではないかと思わせてくれるチョイス。
加えて、「写真」ではなく「写眞」としているのも、情緒がアップしており、監督のセンスが感じられるところ。
また、主人公となる真っ直ぐな性格の結子を、深川が持ち前の透明感と素朴さ溢れる演技で体現しているとともに、残念ながら本作品が遺作となってしまった古谷の渋さが滲み出た演技も見逃せない。
富山県でオールロケされたとのことから、地方都市の空気感が伝わってくるものであり、悪い人が誰も出ず、変化していく人々を映し出すという邦画の王道を行く展開が何とも心地良い一作。

私はあなたを待ってます。
ぶみ

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