のん

ドライブ・マイ・カーののんのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.7
物語のための物語


「ドライブ・マイ・カー」を観た後の感覚はポン・ジュノの「パラサイト 半地下の家族」に近い。もちろんどちらも映画のジャンルは全く異なるが、韓国映画、日本映画という枠に収まらない世界照準のエンターテイメントとして極めて志が高い。


映画という虚構の現実の中でさらに演劇という虚構を通じて現実を描く、という倒錯した構成がこの作品では有機的に機能していて、脚本の巧さに思わず唸らされた。


179分の長尺だが、不要なシーンや間延びしたシーンは一切ない。登場人物たちの心の再生を虚構(舞台)を通じて丹念に描いていく。映画そのものが物語のための物語になっていて、それがいつしか観客に視線が向くように出来ているのも面白い。


西島秀俊と三浦透子が抑えた演技で作品にぴったりの演技をする一方で、岡田将生だけがノイズだったのだが、この違和感も後半のフックになっている。


濱口竜介監督はあと10年ぐらいでアカデミー賞に絡む作品を撮るだろうくらいには思っていたが、私はこの作品で本家のアカデミー賞に絡んでくるのではないかと今は思う。邦画の枠すら超えた大傑作。
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