Okabeee

ドライブ・マイ・カーのOkabeeeのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

家福の妻のキャラクターと、その妻の浮気や死別までを長めのセットアップで丁寧に描くことで、妻がいたという残り香(カッセトテープから聴こえる声も含めて)を観客に携えさせてから、家福が妻の死を乗り越えていくストーリーが始まっていく。

その残り香を丁寧に観客側に醸成させたことによって、みさきが家福の車を運転している姿や、家福とみさきがゴミ処理場で自分たちの過去について話す時間、またワーニャ役を家福が行う一歩の踏み方の感情移入の鋭さが増しているような気がした。
ただ、高槻が捕まることは予想ついてしまっていたし、その捕まり方があっけなかったので、捕まるシーンでなぜか急に、家福に妻を思い出させる存在(浮気相手として)、また家福と車内で語ることでみさきと家福をどう紡ぐかだけのために利用されていたかのような儚さを感じてしまった。捕まり方、もしくは家福との別れ方にもう少し工夫があれば、その冷めた空気感を感じることはなかったような気がする。

また、演出面で言えば、多言語をこれだけ扱いながら構成していくのは並大抵の演出技術ではないだろうし、加えて演劇というメタ構造を扱っているので、さらに難易度の高いことを平然とこなしているように思った。演劇をここまで映画に落とし込める演出技術はなかなか見たことがない気がする。

(3時間尺は正直長く感じてしまったのはあるが、この感覚は近頃見ている映画の見方に偏っているように思い、文学的作品に近い捉え方で鑑賞した。)

にしても、セリフが豊かだったので全てを意図通りに解釈できたように思えない。
また時間を置いたら、違う見え方をするだろう。
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