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ドライブ・マイ・カーのtipsy806のレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.4
喪失と再生の物語は観るよりも聞く映画。原作リスペクトが随所に感じられ、村上春樹の世界がきちんとここにはありました。
大きな喪失を経験した二人が予期せずして1台の車に同乗。人々との交流を通し、心の底に秘めた後悔を理解しあい克服していく言葉だらけの3時間。複雑な哲学、演劇が絡み合うため全て理解はできていないが、それでもずっと対話に呑まれ没入し、村上春樹とチェーホフにとても深く遠くまで連れて行かれる。
本読みを重視する多言語演劇の試みや、チェーホフ「ワーニャ伯父さん」の台詞の展開が、愛を喪失している登場人物たちにシンクロし、喪失感に囚われた主人公達の心を代弁するかのようであった。
人を理解するには自らに向き合うことを経なければ成り立たないのであると語る。淡々とした感じの三浦透子がとても素晴らしく、彼女の為の映画にも見えた。
村上春樹ファンで映像化に疑心暗鬼の方、大丈夫ですよ、面白い。
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