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ドライブ・マイ・カーのHWのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.7
◉拭いきれない喪失の中に見い出す再生の物語。

◉村上春樹の短編を映画化。
『寝ても覚めても』『スパイの妻』の《濱口竜介》監督は、本作で第74回カンヌ国際映画祭にて日本人初の脚本賞を受賞。















【以下ネタバレ含む】














◉自分にとって不都合な真実から目を逸らし、見て見ぬふりをし続けた結果、大事なものを失う羽目になった時、誤魔化しや欺きが、虚偽の日常へとすり替わり、ただそこに残るのは虚無感と空っぽの心。
親しい誰かが亡くなった時に浮き彫りになる他者性は、良くも悪くも自分を知るキッカケになる。他者の記憶や生き様、痛みを通して見い出す自己と、自己の中に存在する他者…両方を受け入れようとする事が人間本来の姿であるなら、どんなに疲れても、どんなに壊れていても、諦めずに必死に模索してゆく事で見えてくる“答え”が必ずあるはず。様々な受け取り方や理解があるにせよ、本作の登場人物たちに共通するバックグラウンドや葛藤を考えながら鑑賞する事で、少しは彼らの境遇に寄り添う事ができ、自分の中でまた新しい知見が広がった気がする。

◉身近な人を亡くした人々や、虚無感や喪失感に苛まれた人が演劇を通じて、脚本に身を委ねながら心の穴を埋めてゆく様は、リアルな人間の本質を観ているかのような気分だった。まるで、人はもっと複雑で多面的な要素が絡み合って生きていて、そんなに器用に心を整頓できるような単純な生き物じゃないんだと改めて気付かされるような。

◉人は葛藤し踠きながら、それでも生きてゆく。人生の旅路を終えた時に「向こうの世界でゆっくり休もう」という台詞が印象的だった。