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ドライブ・マイ・カーのyoshiyukiのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
5.0
妻を亡くした男、家福悠介が渡利みさきというドライバーとの出会いを通じて、自分自身を見つめ直す物語。

この映画全体が「運命」というものに紐づけられているということを感じさせられた。最後の結末から思うと、悠介とみさきには大きな共通点が存在したし、高槻が辿る結末にもきちんと伏線が貼られている。自動車というものも、目的地まで一本道に走り続ける。たとえスタート地点に引き返しても、そこが目的地にもなるし。車を運転する行為、それがすなわち運命の先にある結末へと動いていく行為であったと感じさせられた。

しかしこの映画はただ「運命」の先にある「未来」を見つめるだけではなく、「過去」というものを捉え直すことで、人間は生まれ変わり、真に自分と向き合えるということを映画全体で伝えられているように感じられた。終盤、とある地でみさきと悠介それぞれが過去と向き合ったことにより、彼らは変わることができた。それが悠介にとって必要だったのかもしれない。そのような痛みを伴う行為の重要さ、それにより悠介は変われたということを最後のこの映画は伝えようとしていたと思う。

最後となるが、チェーホフの戯曲のように大切なことはどのような手段を介しても伝わるし不変であるし、村上春樹の短編集の他の章の重要な部分も入れ込める濱口竜介監督の才能も素晴らしかった。ラストのあの光景の向こうにはどのような風景が広がっているのかと思うと、ワクワクさせられる。

P.S.
岡田将生えげつない。
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