極楽蝶

ドライブ・マイ・カーの極楽蝶のレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
5.0
上質のシルクで包まれたような傑作。約3時間の内、最初の1時間は本編への前振り(良い意味で)、その後の2時間が本編。本編では、主役・家福悠介(西島秀樹)の葛藤を本人からではなく、本人が演出する舞台の稽古と舞台をとおして表現するという、ちょっと複雑で難解なところはあるが、美しく静けさの漂う映像がすべてを覆いつくす。
この映画、何しろ観ることをおススメします。観ないと分からない。舞台が多国語で演じられることも、役者の中に韓国語の手話で演じる女優が登場することも表現へのアンチ言語的なものがあるのかも知れないなぁ。そして、ラスト近くの舞台のラストシーンが、この手話の女優の演技で終わっているのも、そのためかなぁ。そうそう、大切な人の中に別の人格が現れることがあるということも、この映画の重要なポイントで、家福と運転手役のみさき(三浦透子)が共感しあうところ。そして、二人ともその大切な人を殺してしまったという罪悪感を抱えていることも。
ところで、ラストシーンでみさきが、韓国のナンバープレートを付けた家福のサーブに乗って、韓国のスーパーで流暢な韓国語を話しながら買い物をし、車には手話の女優さんの家にいたワンちゃんらしき犬が乗っているのはどういうことなのかなぁ? 意味不明のようで意味深長なところなんだろうなぁ。
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