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ドライブ・マイ・カーのtaのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.9
切り返しもロングショットもどこか不穏なんだけど、この不穏さは黒沢清のそれと幾分通じつつもやはり違っていて、濱口竜介という人の作家性を強く感じさせる。

映画において車を運転することが本当の意味での逃亡にはなり得ないということを理解したうえで、その事実と真摯に向き合っている作品だと思った。加えて、単なる移動手段にとどまらない視点で車というものを捉えているのがとても好印象だった。村上春樹の原作は未読だけど、実は『ドライブ・マイ・カー』というタイトルに一番惹かれたんじゃないか。

そうしたことを踏まえると、2018年に『The Dream My Bones Dream』で、これ以上ないほど見事に〈旅〉を描ききった石橋英子が音楽を手掛けたのは必然だったんだろう(その点で、このサウンドトラックが、彼女のここ2年ほどの作品群よりはどちらかというと『The Dream〜』に近い音像になったのもまあ納得はいく)。

『寝ても覚めても』でも思ったけど、決めるべきところを完璧に決めきるのがこの監督の凄いところだと思う。ただしそれゆえに若干反発したい気持ちもあって、映画を壊してしまうような穴や過剰さ、あるいは遊びみたいなものがあって欲しいとも思ってしまう。

気になったのは西島秀俊の演技、とくに雪山のシーンにおけるそれで、あの演技臭さはどうなんだろう。家福が演劇の人であることと関係あるような気もするけど、狙ってやってたようにもあまり見えなかったし、何より『寝ても覚めても』での東出昌大と唐田えりかの凄さを知ってしまうと… 三浦透子はめっちゃ良かったな…