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ドライブ・マイ・カーのsnatchのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.0
主人公たちがゆっくりと答えを探りあて成長していったのを見届けていく映画。
自分自身の内面に真剣に問いかけ向き合えば自ずと愛している人にも誠実に向き合い、心でいたわれるはず。生きている間に。そのメッセージは受けとめました。

これは非言語の映画だとも思いました。心にも耳を澄まそう…
いろんな国の言葉と手話の優しさあたたかさが混じり合う。
夫婦間には哀しみが落ちてから心は通じず…言葉は時に本当に空っぽ。
ドライバーを演じる彼女の表情なくした表情が少しずつ動的変化していくのはサイレントにしても伝わってくる感じ。同トーンの無色透明の妻 音さんの中にある重たい塊りも言葉では表現できない

以下は一度観たきりの映画を一生懸命思い返し自分が感じたままの文です。内容に触れています。








私は冒頭の妻の浮気を咎めない夫につまずき…
そして岡田将生君のあの独白を聞いて、音さんも娘を自分が殺したという思いに苛まれていたのだと…刺さり…
肺炎…たぶん風邪だと思っていたら、あっという間に悪化した。娘のそばにいたのは私。私のせい。母親というものは我が子の亡くなった原因が不可抗力の病気であろうと事故 災害であろうと自分のせいだと思う。娘は逝ってしまった。自分も傷つきたい。彼女の心に本気で踏み込めるのは、パートナーである夫ただ1人だけ。いたわりの言葉ではなくありのままをぶつけてほしかった。心の声を聞いて欲しかった。彼の愛し方では妻は以前の妻に戻れない。本当は別れるべきだった。

彼女の不可解な挙動が全て正常なものに思えてくる。音はずっと自分と娘の記しを探している。封じ込める自分と夫への抑え込んだ衝動が夢と別の男へと放たれる。自分を罰してほしい。
瀕死のヤツメウナギ音の心の叫びを岡田将生演じる若者 高槻は掴んだ。高槻は彼女の深く落窪んだ井戸の中を覗きたかった。何か本当にしてあげたかった。
その彼が無断撮影という暴力にコントロール出来ない怒りをぶちかます性格で描写される。ラストに向かって主人公を舞台に立たせる脚本とは言え、二面性故の簡単な退場が少し引っかかった。彼の成長も見たかったと言ったら4時間になってしまうか😓

自分にとっての夫婦の関係を壊したくないという自分に向き合おうとしないこの中年夫が好きではなかった…と言葉を濁しているが私には人に厳しく自分に甘いというひでえ部分があるのでぐさり刺された。

二人も家族を失った。夫は同じ苦しみ哀しみを抱えた片割れのようなドライバー彼女との出逢いを通し、彼女の運転する車の空気に少しずつ心の緊張が溶けていく。
他者である彼女の抱えている心に誠意をもって正面から見据えることができていく。
彼女が生まれ育った哀しみを抱く故郷に一緒に行こうという思いさえもが生まれる。

最後の雪山で主人公は彼女を助けあたたかく肩を抱きしめる。彼女も他人であった彼を心から抱きしめる、こんなふうに喪失感を抱えた人の心を救うことのできる人にお互いがなれたらこの世界は変化する、そこはそんなことを一瞬感じた。そんな日本映画の体験は初めて。

…しかし、淡々とした映像が思い返すと印象薄く←そのトーンで統一しているのでしょうが。濃ゆい映画が好きな私としてはインパクトの大きい作品としては残らなそう😶この感想も観賞後は映画との距離があったので、自分を寄せて絞り出しました。あと、完璧にリハーサルして作った映画感が苦手。私は自然な呼吸で切りとったセリフにも頼らないような映画が好きなので。
カンヌ歴代の脚本賞受賞作と比べるとメッセージもひとつしか掴めなかった。再度ゆっくり丁寧に観たら、もっといろいろ感じるのかもしれない。やっぱパンフ買えばよかったのかなあ…


🌶🌶🌶コメント
家のTVで朝ドラ出てCMに出まくっている有名俳優が出てくると、その演技がどうしても自然に見えない私😥だから背中だけの雪山シーンには没我したのかも😓女優さんは私の知らない方ばかりなので🙇‍♀️すうっと自分に馴染んでいました。
そして村上春樹より他の濱口作品より「ワーニャ伯父さん」に興味が湧きました🙄

加筆✏️4ヶ月後「ハッピーアワー」を観て、評価を少し上げました。ハマ作品は、初期から観ていくべきなんではと思いました…
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