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ドライブ・マイ・カーのペインのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.1
カンヌで脚本賞、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の4冠という感じは、いつもパルムドール(大賞)は獲らないけれど独立賞を総ナメなアンドレイ・タルコフスキー映画に通ずるものがある。

実際この映画自体もかなりタルコフスキーみを感じる映画で、妻を失った男が主人公で、邂逅と再生がテーマであったり、高速道路やトンネルの🚗描写等はもろに『惑星ソラリス』を彷彿。濱口監督は2007年に『SOLARIS』という短編を撮っているらしく、それがタルコフスキー+増村保造風味との噂を聞いて俄然観たくなっている次第(※比較的最近めの作品だとバックステージものとしてアスガー・ファルハディ『セールスマン』、アレハンドロ・G・イニャリトゥ『バードマン~』なんかと共鳴する部分も)。

ともあれ私は村上春樹の原作及びチェーホフの『ワーニャ叔父さん』すら読んでいない体たらくなうえに、本作を含め近作の『スパイの妻』(※脚本)、商業監督デビュー作『寝ても覚めても』、その前作『天国はまだ遠い』しか観ていない完全なる濱口ビギナーなので語れることなど特にないと言えばない。

それでもそんな私からザックリ観た本作『ドライブ・マイ・カー』は、たしかに濱口竜介がアジアを代表する“世界的巨匠”であることを決定的に知らしめた1作で(※コアな濱口ファンからすればもうとっくの昔に世界のハマグチだ!という意見もあるかとは思うが一旦それは置いておいて)、もの凄く端正で“完成度の高い”作品であることは間違いない(※ファーストショットからもうある種の格の違いを見せつけられた)。

ただ、私が『天国はまだ遠い』から『寝ても覚めても』までは感じていた“完成度が高い”以上の何か、こちらの感情を大きく揺さぶってくる予想を超えた“シビれ”のようなものは本作にはなかったかもしれない。それは私が主演の西島秀俊に対して抱いている印象とも似たものがあって、凄く端正な顔立ちで格好良くて立ち振舞いもスマートで映画も無茶苦茶観ていて…けれど何故か作品を観ていて彼の演技に感情を揺さぶられたり魅了されることがない。正直、本作公開前にメインキャストが西島秀俊と岡田将生と発表された時点で“なんか違う”感が否めなかった部分も多少ある。

まぁこれらの物足りなさは、私の好きな“巨匠像”というのが、ゴダールやホドロフスキーや大林宣彦みたいに幾つになっても落ち着かない、なかなか椅子に座ってじっとしていられないような大きい赤ちゃんみたいな人なので、こればかりは仕方ない(笑)

とゆうわけで内容の考察とかまったくしてないんですけどw、そういうのは考察系YouTuberとかに任せるとして、とはいえ本作を期により濱口さんは映画を撮りやすくなったとは思うのでまた凄い作品を作ってほしい。とりあえず『ハッピーアワー』『親密さ』辺りは観とかなきゃまずいな。




P.S.
軽くネタバレ↓




※後半、サイコ岡田将生がとったあの行動は“映さない”ことである種の恐ろしさを感じたが、S・クレイグ・ザラーだったら寄りで顔面破壊確実。 
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