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ドライブ・マイ・カーのcinemakinoriのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.6


“僕は、正しく傷つくべきだった
本当をやり過ごしてしまった”




村上春樹原作という時点で恐らく文学的な映画なんだろうなぁと予想はつく。
結論、予想以上に文学的で考察を記さなくては作品に申し訳ないのでは?と妙な圧力を課せられた錯覚を起こしてしまう。


メタファーの三本立てからなる脚本、構成は、もう小説をそのまま映像化しているかの如く見事で、ショーレース然り、各国で称賛されるに値する説得力がある。
ただ、それが映画として面白かったかどうかは別問題。

正直、
この作品を観て、恰も監督のフィロソフィを自分なりにこう解釈しましたと語彙で着飾って綴ることを良しとする人に私はなれないし、この映画をそういう視点で語る気も起きない。

その理由は、
終始、あらゆる鏡(ミラー)を越した演出のソレにあるように、繊細な作品をじっと“見つめれば観詰める程”に、自分自身の持つ二の顔三の顔をバラされているように感じるから、、、


それぞれが持つ別の自分
しかしそれもまた真実の自分
それを隠すも露呈するも自分
また愛する者のソレを受け入れるも自分


そんなものを
死ぬまでわかってて、抱えて、そして生きていかなきゃならないんだよなぁ、、、
という着地に至る。
意外と普遍的で陳腐なテーマだった事を後半の展開で思い知らされるので、淡々としたヒューマンロードムービーとして、人生の中での何かの折にふと観返したくなるような一作として捉えた方が愛着が湧く。


戯曲として捉えれば、脚本も演出も粗方違和感なく受け入れる事が出来るが、映画として捉えるといちいち気になるセリフや演技。
これをどう捉えるかもあんたら次第って事でよろしく〜と、監督や作者に放り投げられてるような作品という印象。








あの如何にも考察組が挙って評論しそうなラストシーンは、敢えて感性が遠い人の意見を聞いてみたくなる捻くれ者の私です。
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