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ドライブ・マイ・カーの土偶のレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.2
ずっと見たかった映画だったけど、ふとアマプラを見るともう配信されていたのですぐに見た。
村上春樹好きでもあり、良い映画だと聞いていた上にたくさんの賞を取っていると聞いていたので面白いのだろうなと思っていたけど予想を超えていい映画だった。
もともと私は村上春樹好きなので彼の小説はすべて読んでいるけど、この原作の短編はまったく印象になく覚えていなかった。
映画を見始めて最初の印象は台詞回しにとても村上春樹テイストを感じたけど、すぐに慣れたのか全然気にならなくなる。
物語中で扱われているように思えるテーマは初期以降の村上春樹の「コミットメント時代」に書いてきたテーマのようであったり、どの時代の村上春樹でもないようなテーマが混ざりあっていて、村上春樹の雰囲気はどこか残りつつも全く違うものといった印象だった。
3時間以上と「ロード・オブ・ザ・ドライブ・マイ・カー」なん?ってくらい長いけど、その長さが全く気にならないくらいに全編通してとても重く、そしてとても面白く引きまれる良い映画だった。
映画がとても面白かったので改めて短編集『女のいない男たち』内の『ドライブ・マイ・カー』と設定と物語を引用している『シェヘラザート』と『木野』を読み直してみたけど原作とかなり違った。これは原作よりも映画の方がはるかに素晴らしい。
あと原作で主人公の乗る車は黄色のサーブ900コンパーチブルだけど、映画では赤のサーブ900ターボだった。私はこのサーブ900の赤でが大好きで、過去にこの車のモデルチェンジ後の赤のサーブ9-3に乗っていたのでとても親近感が沸いたのであった。
監督か演出家か脚本家かはわからなないけど、原作の村上春樹の鼻につく部分を消して映画としての物語と映像としての役者の演技だとかビジュアルを見事に再構成してあった。そして映画でありながら「文芸作品」としての風格のようなものも感じられた。
原作とまた違う面白さのある映画は「薔薇の名前」「惑星ソラリス」などあるけど、原作よりはるかに素晴らしいと感じられる映画ってこの映画以外全く思いつかない。
これはいいものだ。
これはこの監督の映画をほかにも見てみたいぞ。
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