MasaichiYaguchi

浜の朝日の嘘つきどもとのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

浜の朝日の嘘つきどもと(2021年製作の映画)
4.0
福島中央テレビ開局50周年記念作品として製作された本作は、南相馬に実在する映画館・朝日座を舞台に、茂木莉子と名乗る女性が震災とコロナ禍で閉館、解体されそうな映画館存続の為に奔走する様を描いていく。
この映画は、2020年10月に放送された同タイトルのテレビドラマ版の前日譚になっていて、両作品共に高畑充希さん主演でタナダユキさんが監督を務めている。
昨年からのコロナ禍により、私が20年前から利用していたミニシアターが今年になって遂に閉館したりして、本作で描かれたことは決して他人事とは思えない。
だから終盤に出てくる以下の台詞がストレートに胸に刺さる。
「みんな、映画館がいつでもあると思っているから大事にしないんだ、どこもそう。解体するとなってから惜しまれてもねえ」
映画で莉子が朝日座を救うべくクラウドファンディングを立ち上げたりしていたが、私も昨年、「ミニシアター・エイド基金」に微力ながら参加したが、やはり常日頃から多くの人々が映画館に行かないと、全国の小規模映画館は立ち行かないと思う。
コロナ禍で何度も出てきた言葉で「不要不急」というのがある。
2021年4月25日から5月11日までの緊急事態宣言で、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県における大型商業施設やテーマパーク、そして映画館への休業が要請され、多くの場所が実際に閉鎖された。
恰もライブや映画などのエンターテインメント、ひいては文化・芸術が、まるで「悪者」にされてしまったかのような印象さえある。
私はコロナ禍でこそ、エンターテインメントおよび文化・芸術は心の栄養として必要だと思う。
アメリカの作家であり数々の映画化作品で知られるスティーブン・キングは、2020年4月にこのようなコメントをしている。

If you think artists are useless, try to spend your quarantine without music, books, poems, movies and paintings.

ヒロインの莉子は家にも学校にも居場所が無くて虚無感に囚われていた高校時代、大久保佳代子さん演じる教師の田中茉莉子と知り合ったことで映画の魅力と出会い、そこに人生を見出していく。
この先生は本作の準主役と言って良い程、キーパーソンとして重要な役割を果たし、折に触れて莉子に影響を及ぼし、最終的には朝日座の存続活動へと繋げていく。
では何故、朝日座のような映画館が必要なのか?
「映画館が閉鎖されても家で動画配信サービスで映画を観ればいいじゃないか」という考え方もあり、実際、Netflixを筆頭にdTV、U-NEXT、Hulu、Amazonプライムビデオは視聴者を倍増させている。
だが映画は、演出や音響、観客に与えるインパクトなどを劇場という空間で、集中して観るために設計されたエンターテインメントであり芸術であると思う。
更に映画館は、同じ時間に同じ空間で集まった人々と一緒に観る、鑑賞後の余韻といった体験を与えてくれる場所でもある。
ただ単に、その映画館に行きたいから映画を観るという人だっていると思う。
この作品は、苦境の中にいる映画に携わる人々、監督やスタッフ、俳優たち、そして映画館の運営者たちに、笑いや優しさを交えながら限りないエールを送っている。