映画館で尿意に勝てない

浜の朝日の嘘つきどもとの映画館で尿意に勝てないのネタバレレビュー・内容・結末

浜の朝日の嘘つきどもと(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

こんなに映画好きがいるんだから、映画館が無くなる心配はないなと思えた映画。

予告編で田舎の映画館を建て直すというストーリーと、終わったと言う支配人に「まだ始まっちゃいねーよ」と言うキッズ・リターンのくだりで一気に心を掴まれ視聴。
脇を固めるキャストが豪華な中、主要人物の先生役に大久保佳代子を起用してるのはどうなの?という思いで観たが、先生のキャラにハマってるし素晴らしい采配。先生の最期の言葉はこれまでの先生を見てたら容易に想像できる一言をそのまま言われたので笑った。竹原ピストルはいつ出てくるかと期待してたらラストのちょい役だったので肩透かし感笑。
登場人物は皆震災やコロナの被害者で、それでもそれぞれ信念を持って生きている人達だから観ていて暗い気持ちにはならない。ご都合主義的なハッピーエンドで終わるのも、この映画には合ってるように感じる。
本作を観て映画館の存在意義について少し考えさせられた。よく経営難の映画館に対して、今はネットで安価にいくらでも映画が観られる時代だからしょうがないという意見を耳にするけど、それは最近普及してきたネット配信にみんな浮気気味なだけであって、映画館自体を必要としてない訳ではないと思う。映画館で観る映画は作品の内容だけじゃなく、家じゃ味わえない音響や大画面、ポジショニングがわからなくなってくる椅子や暗闇で見えない周囲の人の気配と感じるストレスも全部ひっくるめたものだから。同じ映画を映画館で観たのと家で観たのとで印象が変わるのはそういった非日常による差だと思う。銭湯だって家に風呂がない時代よりは利用者は減っただろうけど、家で当たり前に風呂に入る現代でも無くなってはいない。それは銭湯という非日常の空間がみんな好きだから。映画館で過ごす数時間の非日常が好きな人は確かにいて、ネット配信登録者数が頭打ちになったころには朝日座のようなミニシアターが脚光を浴びるターンだって来るかもしれない。