TakaoOikawa

らいか ろりん すとん -IDOL AUDiTiON-のTakaoOikawaのレビュー・感想・評価

3.5
結構な初見殺しかつ、WACKの映画に戻ってしまった。

近年の合宿オーディション映画に於いて、「せかかな」ではアイドルそのものの在り方を問い、「あゝ無情」では夢の舞台に辿り着いた先で何が起きてるかを描き、アイドルという存在を軸に限定的な世界の話でありつつも最終的には広く刺さる普遍性を獲得してきた。

一方、今回はアイドルという1つのゴールへのアプローチも希薄(ワードとしては出てくるが抽象的にしか扱われない)で、「挑戦と執念と覚悟」というむしろ普遍的な人間の生き様がテーマだったがそれをハッキリと感じられる層が偏ってしまう真逆の状況となってしまっており、もどかしさが否めなかった。

そもそも実際現場の温度感の兼ね合いもあったかもしれないが、相当前半が駆け足だったので、軸になるべき合宿の厳しさ過酷さ・理不尽さみたいな所が熱量高く描かれておらず、分かる人には分かるというレベル感だったのがツラい所。エンドクレジットを見ると今までより圧倒的にカメラ台数も少なく、撮れ高的に難しい進行だったとも思うが。

最終的に必要になってくる候補者同士の関係値の育まれ方も、序盤で例として見せきれておらず、話の軸になる人物のことがスペシャルに感じづらくなってしまっていた。

そして今まで以上にWACKらしさがキーワードとして入ってくるのだが、それがいったい何なのかが伝わるパートも薄め。参加した現役メンバーも辛酸を舐めてから這い上がる人も多く、そことの対比は様々な面で効いてはいるが。

総じて、描かれてるドラマを感じる以前に、理解する為に必要な要素が煮詰まりきっておらず、地に足がついてないようになってしまってる。

と、何かと言いつつ、自分も含めて実際に合宿を観ていた人、そしてその後のWACK周辺の流れあれこれを追ってた人にとっては、今日に至るまでに目撃してきた事の裏で何があったかがどんどん回収されていくので物凄く興味深く観ていられる。

チッチ推しは特に必見。

あと、カメラ台数の制約はあった中でも中盤以降の展開に必要になる絵たちはきっちり押さえてたのを思うと、撮りながらもう方向性を決めてたのかなとも。制作過程のドキュメントも観たい。
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