ひこくろ

岬のマヨイガのひこくろのレビュー・感想・評価

岬のマヨイガ(2021年製作の映画)
4.3
田舎や老人の持つ根本的なやさしさが伝わってくるとても愛しい映画だった。
お婆ちゃんも田舎も、ユイやひよりの、そのままの姿を受け入れ、何も否定しようとしない。
「そのままでいいんだよ」と語るようにそばに寄り添い、時にそっと肩を押してくれる。
現実の田舎や老人はこんなに美しいものじゃない。やさしさだってあったとしても一部だけだ。
そうわかりつつも、こんなふうなやさしさが、映画の中にだけはあってもいいんじゃないかって気分になる。
いや、もっと言うなら、こんなやさしさがあって欲しいと願ってしまう。

「そのままを受け入れる」やさしさが、妖怪として表現されているのも見事だった。
とても児童文学らしいし、比喩としても素晴らしい。
かなりスローテンポで始まり、淡々とやさしさが描かれるので、物語として大丈夫かと不安にもなった。
が、やさしさの対極として、過酷な現実や辛い人間関係などから生まれたアガメを出したことで、物語にもちゃんとメリハリが生まれていた。
仲間との協力、敵対するアガメとの対決、そういういまどきの部分が緊張感を生み、それによりさらにやさしさが際立ってくるのがとてもいい。
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