ゴトウ

サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイスのゴトウのレビュー・感想・評価

3.0
一体何を見せられていたのかよくわからないが、サン・ラー(「サン・ラ」表記もあるけどタイトルに従ってこう書く)が自分なりに一本通った信念に基づいて動いている人物であることはわかった。

地球に溢れている音は「いら立ち」「銃声」であり、それは「白人のせい」という前提から始まる物語。方舟的な宇宙船に乗る人を求める際も白人にはかなり厳しかったし、「今の秩序を逆転させる」と語られる通り、逆に差別し返すような発想。貧困やドラッグなど作中でも触れられる問題は確かに人種差別によって引き起こされている側面はあるし、「アフリカから連れてこられた時のように…」というセリフを否定する理由もないのだけど、同じことやり返すというのもな…というのをサン・ラーに言っても仕方がないのだけど。女性に関しても、サンラーとオーバーシーヤー(二人は神に近い超越的な存在なの?)が奪い合う賞品のように描写されてるのはどうなん?という気もする。サンラーに言っても仕方ないのかもしれないが。

黒人女性に対して「被害者意識を持っているから人種差別がなくならないんだ」と語ってはばからないNASAの白人(NASAを悪人に描きすぎなのだがなんか恨みでもあるのか)の描写からも、やはり人種差別に対する怒りがあるのはうかがえる。そうしたアクチュアルなメッセージと、珍妙な格好と言動のギャップがありすぎて気持ちの置き所がわからない。「変な格好の人に変なことを言われても信用できない」と子どもに正論を言わせるのはギャグなのか?変な格好の自覚はあったんだな。「俺も組んだら金になる」という男と普通に組んで「いや金なのかよ」とか、観ている側にツッコませるボケまくり映画?

「地球のみなさんは現実が好きなようだから」とサン・ラーが地球を見捨てたかのようにも見える結末、凡人の頭で読み解くと「黒人であることに誇りを持て、望ましくない現実をそのまま受け入れずに戦え」というようなメッセージなのか?いかんせん乗っかっている要素が多すぎて消化しきれなかった。人間を駒とした賭けを戦っていたようなサン・ラーとオーバーシーヤー、せめて賭けが決着したのかどうかだけでも観せてくれても良かったのに。ただ観て損したとまでは言いたくないというか、人生経験として観られてよかったなと思う。
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