JunichiOoya

天空の結婚式のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

天空の結婚式(2018年製作の映画)
5.0
ローマの北、イタリア中部の観光地「天空の村」チヴィッタ・ディ・バーニョレージョを舞台にゲイカップルの結婚式を描く。

ベルリンで舞台俳優(ミュージカル)のオーディションを受けながら気ままに暮らす二人が結婚の報告に
天空の村へ里帰り。この村、中世からいろいろあって周囲の土壌が崩落しちゃって異様な佇まい。『未知との遭遇』に出てくる「デビルスタワー」みたいな山のてっぺんにかろうじて古い建物が残ってるというビジュアル。その「映え感」は物語舞台にうってつけ。

映画の立て付けは(オチも含めて)完璧に舞台演劇のそれなので、この村をロケーションしたことは、「映画らしさ」を演出上でも不可欠だったんだろうなと思う。

で、少し古い話になるけど(『未知との遭遇』ほどじゃない)10年前のイタリア映画に『明日のパスタは
アルデンテ』というのがあって。絶望的にトホホな邦題ですが、現代は『浮遊機雷』(演劇テイスト溢れるタイトルやね)、というそうです。
南イタリアの傾きかけたパスタ工場。父から長男への社長継承パーティの席上、突然長男は自身のゲイをカミングアウトし、引継ぎは頓挫。実はこのパーティでカミングアウトを決意して里帰りした次男は、兄の騒ぎでタイミングを逸し、ずるずると社長業へ。
そのあと何やかんやあって祖母(パスタ工場創業者)が命を賭して次男の自立・自律を成就させるというお話。
ラストは、祖母の葬列が同時に次男カップルの婚礼のパレードにもなり、すべての登場人物が音楽とともに練り歩く(ね、演劇のラストトっぽいでしょ?)、フェリーニ映画みたいなエンディングになります。

そんな訳で、『天空の結婚式』を見ながら、ワンシーン、ワンシーン二本の映画を突き合わせていた。とりわけ、両作のエンディングのフィナーレ感覚に幸せなオーバーラップを感じながら。

因みに『天空の結婚式』のラストは冒頭の「ミュージカルオーディション」云々の伏線を一気に回収する歌え踊れの大騒動になるんですわ。(ね、二作、共通してるでしょ?)
『アルデンテ』の祖母の役回りは『天空』では両親が既成のジェンダー縛りによる葛藤を緩く活用しながら父母が担っていました。

ジェンダーをテーマに、ポジティブで前向きな(まあ、能天気ともいう)娯楽映画を「どうじゃ!」と披露してくる外国映画の力に、日本社会(そんな大風呂敷でなくとも「世間」でも良いけど)は、もっともっと奮励努力していきたいものですな。
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