Joey

あの夜、マイアミでのJoeyのレビュー・感想・評価

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)
4.0
モハメド・アリは今でもボクシング界のヒーローだし、ジム・ブラウンはアメフトから俳優に転身した草分けだし、マルコムXは後世まで語り継がれる活動家だし、サム・クックはオーティスもアレサも尊敬する本当の魂を歌ったソウル界のレジェンドだ。それぞれの世界を変えた男達が、いつか、この暗く澱んだ景色が変わると信じ、悩み、苦しんでいる。彼らのようなヒーローが集まっても変えられない人種差別。ジム・ブラウンがマルコムXに「お前は色の薄いブラックだ。色の濃いブラックとは違う」と言う。差別は差別を生んで、人々を暗闇に引き摺り込む。

単一肌色民族の日本では到底理解出来ない世界だと思う。日本だって沢山の移民を受け入れてみれば分かる。間違いなく、出身や肌の色でグループが出来て、多数派が他者を差別し始めるだろう。コロナなんかでも誹謗中傷があるんだから、SNSはゴミだめのようになるに決まっている。皆が右を向いているような日本ではヘイトスピーチが横行するに違いない。それを乗り越える術なんて知らないから、アメリカで起こっている事には、ただ立ち尽くすだけ。何も出来ない。底知れない絶望を経験した者だけが、壮大な希望を夢見る事が許される。そう思うしかない、そんな夜が描かれている。
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