ねぎおSTOPWAR

あの夜、マイアミでのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)
4.1
2021アカデミー授賞式OPENINGに登場したレジーナ・キングの初監督作品。製作総指揮も兼任。
1950代から1960代に起きた公民権運動、差別の撤廃を訴える運動が背景。
「マイアミ(フロリダ州最南部)」ってことは差別の際立つ南部です。
大統領選挙において共和党支持が基本の南部。だからジョージア州などでは先日のトランプvsバイデン選挙で注目が集まりましたよね。全員ではないけれど共和党は白人至上主義と親和性が高く、民主党はアフリカンアメリカン、ヒスパニックなど多くの弱者の側に立つ政党。

 ア | ジ
 ラ | ョ
 バ | |
 マ | ジ
 州 | ア
   | 州
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 フロリダ州

という位置関係。

映画「グローリー 明日への行進(2014)」は1965年のアラバマ州の出来事です。その行進は3月7日。
この映画のクレイことモハメド・アリ(イーライ・ゴリー)がリストンを破って世界王者になったのは1964年2月25日のことでした。

この映画は2013年に作られた戯曲から製作されたそうで、だからワンシチュエーション、いかにも舞台演劇っぽいですよね。
上記モハメド・アリ(この試合後にムスリム名に改名したそうですね)が世界王者になった日1964年2月25日に、マルコムX(キングズレー・ベン=アディル)、NFL選手ジム・ブラウン(オルディス・ホッジ)、歌手サム・クック(レスリー・オドム・Jr)たちはモーテルに集合して色々と話をする映画です。(フィクション)

ここに集合する前に、それぞれの身に起こる差別が描かれています。

これ、極めて音楽が重要ですね。

サム・クックがBobby Womack(わしは「DAYLIGHT」という曲が大好き!)の話をするんですよね。
そう!Bobbyはサム・クックが射殺されるまで彼のギタリストをしていたんですよね。
Bobby Womackがvalentinosとして発表していた曲『It's all over now』をRolling Stonesがカバーしたいと言ってきた話のこと。サム・クックは大所高所から賛成して、ストーンズの『It's all over now』が全英で初1位を記録したんです。これは事実。で作曲者クレジットの一人であるbobbyに莫大な印税が入ってきたって話です。サム・クックもまた著作権管理会社を設立していたので儲かったでしょう。
これがその曲。
https://youtu.be/Ur-yMil88fU
「とにかく全ては対白人の運動に集約されるべき!」というマルコムと、怒りを感じつつも冷静に利益を考えるサム・クック。同じ黒人でも薄い黒と濃い黒との差を指摘するジム・ブラウン。基本マルコムを信じるアリ。
一枚岩ではない・・。

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以下ラストシーンに触れますので!!
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で、その流れからマルコムXがかけるレコードがボブ・ディラン「風に吹かれて Blowing in the Wind」ですよ「~答えは風に吹かれている~」ですよ。いい曲ですね。
マルコムXが言うような”我々の闘争の唄”って言うより普遍的な歌なんだと思っていましたが、特に当時は「黒人が受ける差別に抗う、つまり公民権運動を白人がバックアップした」って認識だったのでしょうか。
このシーンの「確かにオレはこの曲を聞いた時衝撃を受けた。オレだって書いているんだ」というサム・クックのセリフは後付けフィクションとしても、実際「風に吹かれて」に刺激を受けて書いたのが「A Change Is Gonna Come」。後に運動を象徴する曲となりましたが、映画のラストに持ってくるところがね。
https://youtu.be/wEBlaMOmKV4
なんだかんだ言いつつ迎合なんてしていなかったサム・クックの涙がテレビに映し出され、それを画面で観たマルコムが目頭を・・・素晴らしいラストでしたね。
A Change Is Gonna Comeいつか変化は訪れる・・・オバマが大統領にはなった・・しかし一日三人の黒人が警察に殺されている現実(「隔たる世界の二人」受賞コメント)

「マ・レイニー・・」だし、「ジューダス・・」だし、そもそもは「アミスタッド」だったわけで。
人間ってほんと罪深いよなあ。・・どの民族も。