マサキシンペイ

Helplessのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

Helpless(1996年製作の映画)
2.1
青山真治「北九州三部作」第一弾!
浅野忠信演じる高校生の健次と光石研演じるヤクザの安男がそれぞれ父と親分をなくし、それぞれ無差別な暴力に傾いていく。
繊細な心情描写を期待してしまう映画だが、ほとんど感情移入が許されないほど描写がない。

これは演出の力不足というより、意図的に欠落させられている。作中のほとんどが斬新なほどにロングショットで構成されていて、浅野忠信と光石研という名優を揃えていながらも、表情の演技がほとんど読み取れないからだ。タイトル通り救いのない展開が繰り広げられるのだが、えげつない暴力もあっさり軽く行われ、あまりにも響いてこない。

同情する他者が存在する悲劇は救いの手が入り込む隙間があるが、誰の胸にも響かない悲劇は「Helpless」であるのは確かであり、この映画は名前に恥じず観客の感情移入を拒絶している上で、真に悲劇的である。

しかしこのメタレベルでの逆説に、あまり好意的にはなれなかったが故の低評価。
マサキシンペイ

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