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ローラ殺人事件のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ローラ殺人事件(1944年製作の映画)
3.5
No.168[殺人に発展した「ファントム・スレッド」] 70点

長年観たかったのにいつも忘れてしまうプレミンジャーの初監督作品。当初の監督はルーベン・マムーリアンだったが、彼の演出に不満を覚えたプレミンジャーは仲の悪かったプロデューサーのザナックに働きかけ、彼もそれに賛同して後釜に収まったらしい。ちなみにカポーティが友人のリジー・ラジヴィルのためにドラマ化したが、演技が酷評されたせいでラジヴィルは女優業から足を洗ったとのこと。

殺人現場に刑事が被疑者二人を連れてきて、尊大な作家と胡散臭い婚約者の喧嘩を、刑事が子供向けボードゲームの片手間に止めに入る。変人だらけである。そして、この尊大な作家というのが外見的にはデヴィッド・ストラザーンに似ていて、内面的には「ファントム・スレッド」のレイノルズ・ウッドコックに似ているのだ。自分の見つけた女を階級の高く教養があって権力もある自分に対して似合うよう自分ナイズするという変態老人だった。思えばこの老人だけ常に恋のマウントを取り合うローラ、シェルビー、アンの三人から完全に蚊帳の外扱いされているので、結局勘違い殺人に発展する感じはよく分かる。

それに対するイケメンマッチョプレイボーイのシェルビーはローラの叔母アンやローラの部下ダイアンにも言い寄られていて、ローラに惚れたから彼女一筋としつつも、彼女が逮捕されるとアンの手にキスしたりローラがいなくなったらダイアンをローラの部屋に呼んだりとクズである感じは一貫している。

確かにマムーリアンであったら間延びしてただろう。しかし、ノワールというより普通のサスペンスだし、人物たちも常識の範疇にある変人といった感じで、存外に堅実な映画であった。
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