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フィールズ・グッド・マンのTEPPEIのレビュー・感想・評価

フィールズ・グッド・マン(2020年製作の映画)
4.8
人気アーティストが生んだお気楽キャラクター、カエルのぺぺ。その愛すべきペペが邪悪なネットミームとしてヘイトシンボルに認定されてしまう。この狂乱のネット時代から、カエルのペペを救う!
こんなカエルに、誰がした!?

「フィールズ・グッド・マン」はトランプ政権時代アメリカの、行き過ぎた保守層によって引き起こされた邪悪なミームの恐ろしさと、望まぬ方向に行く波に苦しむアーティストの闘いをユーモラスに、アイロニーも込めて作られた最高のドキュメンタリー作品だった。

マット・フューリーの漫画「ボーイズ・クラブ」。ハッピーなキャラ達が若者の世界に投影された漫画はカルト的人気を誇っていたが、キャラクターのカエルのペペはいつしか作者の知らぬところでネットミームとして改変されていた。そして2016年。
大統領選が控えるアメリカ。匿名掲示板でオルタナ右翼層が人種差別的イメージになんと、ペペを使用し始める。ペペの乱用。ついにトランプ大統領、対抗馬のヒラリー・クリントンでさえ、ペペの存在を「政治利用」したことで、匿名掲示板の所謂引きこもり達が''社会変革''を謳うが…。
ハッピーなキャラクターなだけだったカエルのペペ。自分が作り上げたキャラクターがヘイトの象徴にされた、作者のマットの決断とは…!?

恐ろしいことに作中に出てくるオルタナ右翼、行き過ぎた共和党支持者、匿名掲示板でヘイトの書き込みをする輩は同じ人間なのかさえ疑ってしまうほどの酷さだ。真っ当な共和党支持者ではなく、そこに映るのは、「間接的手法による、直接的暴力」だった。
ヘイトシンボル認定までされてしまったぺぺの作者であるマットの人柄や、キャラクター、漫画に対する愛が全編に渡って伝わってくる。この映画で新しい発見がまた見つかった。

トランプ大統領を生んだのはブルーカラー、エリート層への劣等、オートマ化した職場で仕事を失った層への支持だと思っていたが。大きな要因である、リベラルとエリート層、ノーミー(一般層)への''恨み''が具現化したもの、つまり社会への不満を謳う最強ニートたちだ。そこに論理的な審議はない。

銃乱射事件があれば、人々、共和党と民主党はライフル協会や憲法の審議を行う。しかし、匿名掲示板にいるような連中はぺぺを用いて、銃乱射は社会への制裁だったと賛美する。こんな馬鹿げた連中には怒りどころか、僕自身は死んでしまえと素直に思ってしまった。
ネットリテラシーを研究し、日々奮闘する者がバカみたいじゃないか。
アメリカの政治にも及んでしまった、ネットミームの恐ろしさは本作はとてもよく描いている。これは社会派スリラーと言われても、遜色ない。

マットが描きたかった、純粋なキャラクター・ペペ。この映画は絶望的なペペに、希望をくれる。ぺぺの底力、ペペがいかに愛されているか。勝手にヘイトシンボル認定しやがった名誉毀損防止同盟を名誉毀損で訴えてやれ!って最高か。

総評として、オススメできる最高のドキュメンタリーフィルム。カエルのペペを筆頭に、この映画は、カエルが社会を支配したのか、社会がカエルを支配したのか、最後まで鑑賞者を考えさせる。勝負する。
この映画を応援することで、ぺぺを救える気がした。
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