うっちゃりはちべー

フィールズ・グッド・マンのうっちゃりはちべーのレビュー・感想・評価

フィールズ・グッド・マン(2020年製作の映画)
4.3
愛嬌のあるカエルのぺぺとその仲間達のアニメーションを挟み、飽きない作りのとても観易いドキュメンタリー。しかし内容は深刻で恐ろしい。
ペペ自体は日常マンガのゆるゆるとしたキャラクターなのに特に政治色のせの字もないセリフでミーム化し、ヘイトシンボルに仕立て上げられていく様が怖過ぎた。

コラ画像や二次創作がどんどん投稿され、投稿者はクリエイターだし……と静観していた作者がどんどん追い詰められていく。
元々自分の物ではないキャラクターを「取られた!」と憤るその他大勢。作者の苦渋の決断の後でも「でもあれは本物のぺぺの話で、私達の知ってるぺぺじゃないし(だから作者が何を言おうと知らない)」という開き直りなどなど、とにかく認識が全く違うので話も通じない。

4chのくだりは日本でもまんまあんな感じだし「4ちゃんねらー」と訳されている字幕がしっくりくる。
「暴力はよくないけどテロリストに勇気をもらった」ってあれ、本当に本音なんだろうな……(あの層は殊更露悪的に見えるし実際そうなんだろうけど、彼らがそうなのは彼らだけの責任ではない。でもそれもあんまり擁護材料にするのはよくないかも)

極端な悪意の影響は目につき易いけれど、失ったモラルを取り戻そうとすると変化が見えにくく地道で長い時間がかかる。
自分が創作者かその他大勢かに関わらず、面倒でも悪意にはその都度NOを突き付けていくしかない。それも早めに。
他人事で観ていてもインターネット・SNSを使用する限り、自分もあの映画のどこかにいる。
自分の立ち位置がどこなのか。嫌でも思い知る事になる映画だった……けど、最終的に元の空気感と緩やかな愛情で〆るラストが軽やかさも残してくれて、タイトル通りの気分で終われる。
そこまで含めてとてもいい映画。おすすめ。