このレビューはネタバレを含みます
立ち位置
人間所詮顔なんてあんまり見てないんだな、そりゃそうか。久しぶりに会ってピンとくる知り合いなんて一握りもいないかもしれない。逐一何があったか、なんて時が経てば思ってるより忘れちゃうものなのかも。
とんだミステリー。一種のジャパニーズホラー?怖すぎないか?だって知らない女がある日突然現れて居座られて思い出のあさりの缶詰パスタにしてんだぞ。そいつはな、お米だったんだ。前原滉にすっかり感情が乗っていたとき、かなり不愉快な気持ちがたしかにあった。
正面から見た時たしかに「どっちだ?」とも思った。茉莉?マリ?それとも………。いいか、結論なんて出した方が負けだこんなもん。「良い女」としては周りからして変わらないんだろう、きっと。
「入れ替わった」と表現しているのがとても気になっていたけど、実際何にも変わらない場所で、何にも変わらないことをやって、同じような時間を過ごしてみると案外落ち着いてしまうのかもしれない。
終演後のアフタートークは山西監督と橋本淳さん。
自身の恋愛でどの彼女にも「一番好きだよ」って言葉を毎回言ってしまうという事から生まれた作品だった、と。
めちゃくちゃ腑に落ちた気がする。そうか、唯一無二の大好きでめちゃくちゃ愛している人だって万が一別れてしまえばまた人は決まったように違う人に恋をする。時を重ね合わせて分かっていくのかもなぁ、その人の良さって。
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それにしても紀夫が毎回帰る時には坂を下っていることに「どんなに登っていっても必ずマリの元に帰ってきてしまう」という話には一番ゾッとした。確定しない未来のこともそうだ。いつだって何かを決めたことはなかったんだ。茉莉は何を思っていたんだろう。