EDDIE

ボクたちはみんな大人になれなかったのEDDIEのレビュー・感想・評価

3.9
“フツー”か“キテる”か。
鬱屈とした日々を過ごしていても当たり前が良いと思えることも。
時系列を遡る構成が少しずつ意味を見出していく。
佐藤はどんな人生を歩んできたのか。
フツーが一番。でもどれもが特別な瞬間だ。

燃え殻の同名原作をもとに製作された作品。
時系列の描き方が原作とは大きく異なるようですね。
原作は未読ですが、30代も中盤に近づいてきた身としてはなかなかに興味深い映画でした。

森山未來演じる主人公佐藤は46歳。
仕事も恋も一端に経験してきて、なんだか人生に諦めを抱いているような感覚。
ただ結婚を控えた恋人とは順を追って結婚することが“フツー”だと感じて乗り気ではない様子。
まぁこれが結構過去の恋愛を引きずっていたりするわけですが、そこに至るまで佐藤がどんな人生を歩んできたかってのがリアルに描かれていきます。

ここでいうリアルというのは、本当に身近にいる人、なんなら自分も含めてこんな所謂“フツー”とも呼べる人生を送ってきてるんだろうなってのが想像できるところです。
だけど、そんな“フツー”がその人にとっては特別だと思える瞬間ばかりだったってのがクライマックスにつれて見えてくるのがとても良いんです。
まぁエモいって感覚ですかね。

私はこの映画とても好きですよ。

佐藤の同僚である関口役の東出昌大なんかも序盤はなかなかぶっ飛んだキャラ描写で登場するんですけど、時系列が遡り、佐藤と出会う頃まで2人の関係性を見せられるとまたエモい。
いつ潰れるかわからないような小さな会社でしこたま頑張っている2人の姿とか社長役の萩原聖人とかまぁ良かった。

この映画の核となるかおり役の伊藤沙莉も本作風にいうと“キテ”いました。
出会ったばかりであのキャラは確かにミステリアスさもあり魅力的に映るんですけど、年を経るごとにキツいですよねぇ。だけど、別れるまでの過程と別れてからの人生を考えると、そんな元カノのことを忘れられない男のウジウジした諦めの悪さみたいなのはすごく共感します。
なんかね、男は上書き保存が上手くできないんすよ。そんな生き物です大抵。

あとは本作において物語上は全然重要なキャラではないんですが、個人的に印象に強く残ったのが奥野瑛太。
私自身奥野瑛太が役者として好きというのもあるんですが、初登場からその後の時系列を遡る展開で彼が凄く特別な存在に変わるんですよね。
映画に登場するキャラクター1人の人生においてほんの一瞬の交わり。なんだけど、それは強く記憶に残るわけです。
あそこはめちゃくちゃなんか目頭熱くなっちゃったなぁ。

一部劇場公開中ですが、Netflixにて配信中の新作映画でございます。
30〜40代ぐらいでこれまでの人生を振り返って浸る時間があるような人には観てほしい作品です。

※2021年新作映画166本目
※2021年自宅鑑賞225本目
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