コウキ

ボクたちはみんな大人になれなかったのコウキのレビュー・感想・評価

4.0
どこに行くかじゃなくて、誰と行くか。

40代独身の佐藤は自らの仕事に誇りを持つこともなく、ただ毎日を過ごしていた。そんなある日、Facebookで元カノのアカウントを発見。かつて”普通”を嫌っていた彼女は、結婚し、子供を授かり、”普通”の家庭を築いていた。佐藤が過ごしたあの頃の日々が走馬灯のように思い出される。

逆時間軸でストーリーが進んでいく構成は従来の作品と違った見方や繋がりがあっておもしろい。

1990年代を生きていないのに、どこか懐かしく、ノスタルジックになってしまうのは、役者陣の演技力とそれらを巧みに捉えるカメラワークにある。時代背景を上手く汲み取って、時代ごとの流行りや機械類の進歩がよく分かった。経験したことがない文通やポケベルもやってみたかったな〜と思った。

普通を忌み嫌っていた人が、普通の生活を好むようになる。あの時とはまるで別人のような考え方で生きてる。これって普通で、時間が進み、様々な経験をすれば、考え方も変わる。
ただ、1つのことにしがみついていては、その変化を毛嫌いしてしまい、固執してしまう。その結果、時だけが過ぎ去り、自分が空虚な存在と感じてしまう。
過去を振り返ってもいい、前を向けなくたっていい。ただ、今を生きよう。

コロナ禍の億劫とした毎日を経験した社会に、今を生きる大切さを気付かせてくれる作品。
コウキ

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