ラダ

ボクたちはみんな大人になれなかったのラダのレビュー・感想・評価

3.8
観るひとの人生の色によって、本作品の評価は著しく変わるだろう。年齢、生きてきた場所、音楽は好きか、好きならばどんな音楽を聴くか、どんな恋愛をしてきたか、どんな失恋をしてきたか。

そして今、幸せに生きているかどうか。

森山未來が演じる佐藤は、2020年で46歳。私よりひとつ先輩だ。伊藤沙莉が演じるかおりと同じく、私の妻は「普通」を嫌う。彼らが渋谷や原宿で遊ぶフレームの外に、恐らく私たちは居たし、クラブのVIPで佐藤が陰気くさく酒を飲んでいる時、私たちはフロアで踊っていた。WAVEよりタワーよりHMV派だったけど、偽の星空が見えるラブホテルで彼らがイチャついている時、隣らへんのホテルで私は腰を振っていたのだ。

そして、彼らと同じ時代を生きた私たちは、CDを借りパクされることなく無事結婚。お陰様で佐藤とかおりに二十数年前の自分たちを重ねて観るという、追体験ともまた違う、何とも不思議な時間を過ごさせてもらった。貴重な経験ができたと思う。

ただコレが映画の評価となると少々難しい。観る側の人生によって180度感想も変わるだろうし、理解自体ができないシーンもあるだろう。だから人様に軽はずみにお薦めもし辛い。点数なんか付け辛い。恐らく観た人が口を揃えるのは、20〜40代を見事に演じ分ける森山未來の凄さぐらいだろう。

それにしても子どもの頃、ボクたちは「大人になりたい」なんて思っていただろうか。私は未だに大人になんてなりたくない。46歳で言うべき台詞ではないとは知っている…。

つまりコレは、かおりが「普通」を嫌っていたことと同意なのだろう。普通を受け入れて大人になる人生。それをかおりが今どう思っているか知る術はない。佐藤すら分からないのだ。私たちが知る必要はない。
ラダ

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