ミシンそば

浅草キッドのミシンそばのレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
4.2
NETFLIX映画でハズレが多い(俺が勝手に)と思っているのは、アメリカ映画(当たりもかなり多いが)、ポーランド映画、そして日本映画。
だが、この浅草キッドはものすごく良かった。
そして失礼ながら劇団ひとりにここまでの傑作を撮れるとも思っていなかった。
いや、これはすごいよ。

四十年以上前の(地面にタバコカスめっちゃ落ちてて、基本的にリテラシーが低い)昭和の浅草の再現度は高い。
そしてビートたけしがいるとしか思えない、柳楽優弥の憑依演技がとにかく圧巻。
抜群に面白いのに時代の潮流には逆らえずに「過去」になってゆく大泉洋の深見千三郎も、どれだけ落ちぶれたって矜持を捨てない芯の強さを感じられるとても熱のこもった演技だった。

見る見るフランス座から客が減ったり、客がトイレであれするのを死んだ顔で延々と聞かされるのを見せる地獄のようなシーン。
そう言った、当時だけでなく今の芸人にも全く当てはまらないわけではない現実(ここで、そう言いたくないが…)からも逃げていない。
麒麟児の成長物語だけでなく、嘗ての英雄の凋落物語としても悲しいくらいに美しい。

最後の、甘く優しい幻は、少々あざといがそれでも……。