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オーストラリアのtakのレビュー・感想・評価

オーストラリア(2008年製作の映画)
3.3
「ムーラン・ルージュ」のバズ・ラーマン監督が、祖国オーストラリアに対する愛情を注ぎ込んだ大作。 同郷のヒュー・ジャックマン、ニコール・キッドマンを配して、豪州版「風と共に去りぬ」とも言うべきスケールの大きな作品に仕上がっている。第二次世界大戦直前のオーストラリアを舞台に、夫を追ってやって来た英国人女性と、自由に生きてきた荒くれ男の愛の物語を中心に、先住民アボリジニーに対する差別政策を絡めている。「白豪主義」と呼ばれるアボリジニーに対する差別政策は、1970年代まで続いていた。そして映画のエンドクレジット前にも出てくるが、オーストラリア政府は、2008年にこの政策をやってきた過去について、アボリジニーに謝罪の意を初めて表明した。そういうこともあって、この映画は製作されたものだ。

「白豪主義」に関する現実を描くという面においては、同じオーストラリア出身のフィリップ・ノイス監督が撮った「裸足の1500マイル」(2002)の方がはるかに感動的だし、どんなに非人道的なものだったかははっきりとわかる。「オーストラリア」では、アボリジニーの少年との心の交流が描かれる。それは人種を越えた愛情を感じさせ、美しく描かれる。バズ・ラーマンの演出はとてもファンタジックで美しい。だが、それ故にときにアボリジニーを(この映画を製作した側の)白人にとって理解を超えた存在として感じられる部分もある。暴走した牛を沈める奇跡をやってのける場面やアボリジニーの祈祷師キングジョージの描かれ方は確かに面白いが、やたらと神秘性を強く描いているようにも思える。だが、考え方の違いを乗り越えてお互いを認め合うことができたラストシーンはやっぱり感動的だ。オーストラリアの雄大さとすべてを受け入れてくれるような懐の深さがある。

「ムーランルージュ」でも既成曲をうまく使っていたが、本作でも Over The Rainbow をうまく使っている。「オズの魔法使い」を観るために黒人になりすますナラ少年。カンザスに帰れるのかというドロシーは、ナラ少年がもとの生活に戻れるのかということの投影かもしれない。霧の向こうからハーモニカの音色がきこえるクライマックスは、できすぎだとも思うがそれでも感動してしまう。音楽の力って偉大だな。ヒュー・ジャックマンの男臭さ。時にコミカル、時にシリアス、ニコール・キッドマンはとても生き生きしている。長尺なれど十分に楽しめるはず。
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