mimitakoyaki

偽りの隣人 ある諜報員の告白のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

3.8
あまりよく知らずにサスペンスのつもりで見てみたらコメディでした。
時代は1985年の韓国、民主化を目指す大統領候補を拉致して自宅に軟禁し、隣家で諜報機関が監視・盗聴するのですが、毎日大統領候補と家族や友人達との会話を聞くうちに、彼の誠実な人柄や崇高な政治理念を知り、共産主義者と決めつけ、手段を選ばずに候補の暗殺を企てる諜報機関に対して次第に疑問に思うようになっていくという話です。

前半は盗聴した内容を、これは何かの暗号ではないかと的外れな推理をしたり、留守中の候補宅に忍び込んで、捏造した証拠を仕込もうとしたりがドタバタと面白おかしく描かれていて楽しく見れます。

盗聴する諜報員が、主人公のチョンウの他に、「SKYキャッスル」で強烈なミソジニー親父を演じたキムビョンチョルが、ボサボサ長髪のダサい感じで、今までの悪人顔を活かした悪役のイメージとは違う、ちょっとマヌケな役柄で新鮮です。
また別の諜報員には、「D.P.」で過酷な虐めを受ける若い兵士役で印象の強かったチョヒョンチョルも出ていて、この3人のスットコドッコイな諜報活動がゆる〜く展開されます。

しかし後半は一転しシリアスに。
大統領候補が、諜報機関によってさまざまな弾圧を受け、深刻な目に遭っていきます。
盗聴、監視、暗殺計画、事件のでっち上げ、拷問…と民主化を阻止するためにあらゆる汚い恐ろしい手を使ってきます。
このあたりの描写は、韓国の民主化を描いた「タクシー運転手」や「光州518」「1987」「弁護人」などの作品やいろんなドキュメンタリーなんかでも散々見てきたので、実際に国家安全企画部なんかが暗躍して、市民を拷問、暴行、虐殺してたのも知ってるし、この時代の大統領(金大中など)候補は実際にこんな感じだったんだろうなと思います。

自分だけでなく、周りや家族まで巻き込んで危険な目に遭ってでも、民主化を勝ち取るために命懸けで闘ってきた韓国の歴史をあらためて感じました。
コメディなので、軽い感じで見れたし楽しかったです。

5
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