むぎたそ

愛について語るときにイケダの語ることのむぎたそのレビュー・感想・評価

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余命わずかと宣告された障害者(いわゆるコビト)の青年が死ぬ間際にできるだけ多くの女性とセックスしたいと思いその行動を友人と映画にするというドキュメンタリー。
ぶっちゃけイケダはめっちゃイケメン。自立して一人暮らしもしててちゃんとした仕事もある。市役所で働いてる。(だからこそかなりモテてきたはずで性体験に困ってるとかしたことないとかのパターンではない。友人の真野さんとの会話から推察するに家族にもすごいのびのびと育てられてきたのかなと思った。)それで、女性によく「かわいい」と言われるのだが、それを利用してやろうくらいの自己愛はありつつ、それでも「かわいい」にはかなりもやっとしてて、この日本で障害者であるということはやはり健常者が全く思いもよらないような様々な葛藤があるのだろうとアフタートークを聞いていても思った。
障害者はこうだろうとか死ぬ間際の人たちはきっとこうだろうとかやっぱりある程度ステレオタイプな思い込みが自分にはあったんだなということに気付かされた。死ぬ間際まで、めっちゃくだらないゲスいエッチな話を男同士で、笑いながら、してる。でもそれが不思議といやなかんじはしなくて。(真野さんと構成の佐々木さんはホモソーシャルなりすぎてない?って気にしてたけど。)男はこうなんだろうなと思った。
驚くほど、普遍的な、生きることについての話だった。
私は性欲って正直よくわからないんだけど(本当に男性とは違うんだと思うし、女性の中でも人によってかなり差はあるのだろうと思う)、観てる間中、「愛」とか「好き」とかについても、ぐるぐる考えちゃう感じだった。いや、考えても、よくわからんのですけど。
(アフタートークにて、本作はエロ業界の人がけっこう観客として来るらしく、乱行パーティーの主催者の若い女性が、なんでもっとHシーンないんですか!と怒っていた、と聞いた。うん、でも、作品のバランス的に、重視するのはそこじゃないんだよねえ…と、佐々木さんのコメントを聞いて思ったけど、素材を残して亡くなったイケダはもっと膨大なHシーン入れてほしかったかもともおっしゃっていて、それも一理あるな、と思った。)
とにかく、イケダも真野さんも、真剣に「生きていた」。気を張ってるとかもなく。ふつうに、生きていた。それがとてもよかった。きれいごとがなかった。脚本上、女の子に「告白」をさせて、イケダがどう応えるか、というシーン、本当に誠実でよかったな。
(職場の市役所でもキャラクター的な感じで人気者だった)イケダが、映画を公開することで、俺のダークサイド(ピンクサイド)を見せてやるーって意気込んでたらしいんだけど、映画を見に来た同僚たちが、「ああーなつかしい!知ってる知ってる」ってなったらしく、本人はダークサイドを隠してたつもりなのに、それはダークサイドではなかったし、バレてたのも、ウケると思いました。。イケダさんらしいエピソードなんでしょうね。

面白かった。明るい。でもやっぱ死んじゃうんだ、ってなるし。で、真剣に考えたりもするし。でも、終わり方もさわやかな感じだし。いろいろなことを考えたくなる。いい映画だった。
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