"1, 2, You know what to do♪"
これすごい。面白かった。
何というか、スパイク・リーの『パス・オーバー』を観たときの気持ちに近い。
舞台は1927年のシカゴ。
収録スタジオで繰り広げられるワンシチュエーションの会話劇。
レコーディングの主導権をめぐって、ミュージシャン同士の衝突が描かれる。
とにかくすごいのが、他愛もない会話をきっかけに派生する圧倒的会話量。
レコーディングや音楽のことだけに留まらず、搾取され続けてきた黒人文化の歴史に触れ、彼らが実際に遭ってきた不当な仕打ちやそこから得た教訓、それぞれの人生観に至るまでが94分という短い中に詰まってる。
中盤のチャドウィック・ボーズマン演じる野心家のレヴィーの長台詞シーンが凄まじかった。。
これ、5分くらい続いたんじゃないかな…?
"イエッサーと言いつつ、俺はタイミングを計ってる。"
レヴィーが涙ながらに語るこの台詞が印象的。
そしてブルースの母ことマ・レイニーは傲慢で高圧的な態度なんだけど、これには彼女なりの理由がある。
"白人の連中が欲しいのは私の声だけ。
それ以外は野良犬扱い。ナメた態度は許せない。"
白人社会の中で生き抜くには、プライドでガチガチに固めた鎧を纏うしかない。
皆それぞれが白人社会の中でどう生きるか、彼らなりの考えを持っている。
笑顔を見せつつ時機をうかがうか、ナメられないよう態度で示すか、または諦観するか、、、
スタジオの熱気、役者陣の熱演、ものすごい熱量の会話、、
こんなに"アツい"映画久々に観た。
劇中にも出てくるけどめちゃくちゃコーラが飲みたくなる。笑
主演のチャドウィック・ボーズマン、なんて素晴らしい俳優さんなんだろう…!
もう彼の演技が見れないなんて残念でならない…
彼が出てる映画は大体観てるけど、個人的には本作の演技が今まで観てきた中で一番好きだった。
これまで正義感の強い硬派な役柄が多いイメージだったけど、こんな陽気なキャラも演じるんだっていうギャップもあったかな。
遺作にして、過去最高の演技を見た気がする。
オスカー受賞は間違いないと思う!