しゅん

尼僧ヨアンナのしゅんのレビュー・感想・評価

尼僧ヨアンナ(1961年製作の映画)
5.0
11月28日 ポーランド映画祭

ぼくらの愚かしすぎる心を緊迫した映像表現においてポエジーに変えた傑作。今でいう神父のPOW視点で捉えられた空間に忍ぶ不安感。酒場の親父は奥にいたかと思えば突然にカメラの前に顔を出す。怯えを隠せないほど不安定な心境にいるくせに、悪魔に取り憑かれた女を救おうとする。なんて馬鹿なんだろう。宗教と愛の裂け目に自らを見出し、男はやがて荒野において狂気を抱く。父親を殺された無邪気な子供たちが彼の側ではしゃいでる。そして、反復された生活を引き裂く一つの音。
宗教心がわからなくても、洗濯棒に干された尼僧服の奥に隠れるヨアンナを目で追いかけたものなら、十字形に横になるあまたの尼僧たちを上から撮るショットに戦慄を覚えたものならこの映画が何を描こうとしたからかわかるはずだ。自らの視点と神の視点に引き裂かれ、二人の私に引き裂かれ。いくつもの私を統合できず、恐れを抱えたまま、にもかかわらず愛するなにかを孤独に救わなくてはいけない。慎ましく、それでいて消えない恐怖。人を驚かせない静かなこの映画は、愛を徹底的に主題化した最もラディカルなホラー映画なのだ。

…2012年に観た時に好きすぎたせいで再見するの不安だったけど、やっぱり大傑作で安心しました。この映画の衝撃的なところをなんとか言葉にしてみようと腐心したが、うまく書けているだろうか。いずれにせよ生涯ベストです。ヨアンナはブリッジした後に自力で立ち上がっててとんでもない身体能力です。
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