KnightsofOdessa

尼僧ヨアンナのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

尼僧ヨアンナ(1961年製作の映画)
3.0
[押し問答版『エクソシスト』、或いはキリスト教的お悩み相談] 60点

ルーダンの悪魔憑きについての映画はケン・ラッセル『肉体の悪魔』の方が有名な気もするが、熱烈なポーランド映画ファンのおかげなのか日本でもそれなりの知名度を持つカヴァレロヴィッチの代表作。『夜行列車』は大好きなんだけど、ヴィンニツカお姉様の修道服が絶望的に似合ってないので全く観る気の起きなかった一本。

『エクソシスト』の成功によって悪魔祓いというジャンルが爆誕したわけだが、その系列の映画では悪魔祓いそのものに映像的なダイナミックさが備わっていた。それに対して、本作品は舞台が中世の女子修道院だからなのか、映画が1961年の作品だからなのかは知らんが、映像的なダイナミズムは感じられなかった。というか、意外なことに悪魔祓いの対象者が基本的に自由に動けるのに祓う側の人間があんまり動かないので、わちゃわちゃしていた。

キリスト教は長い間、表向きの"悪魔に憑かれて苦しめられている"という"外的要因だから仕方ないんす"的スタンスを貫いてきた。しかし、本作品では、それが"実は愛でした"という人間の内側にある感情が原因だとしたのが革新的らしい。実際、製作当時は教会に怒られたらしい。しかし、既にベンヤミン・クリステンセンが『魔女』で同じようなこと言ってた。加えて、"愛欲=悪魔"という構図は、厳格なキリスト教徒なら許せないんだろうけど、無宗教の人間には到底理解出来ない。全編に渡って繰り広げられるのはキリスト教的なお悩み相談である。宗教者が嫌いな私からしてみれば自業自得としか思えないんだけど、この時代の人間はそれくらいしか道がなかったんでしょう。だからといって映画が面白くなくても良い言い訳にはならんのだが。

何箇所か良かった点。よくポスターなどで使用されている五体投地のシーン。あれは良かった。ただ、それ以外が超微妙なのでここくらいしか使うとこないのかな、とちょっと同情した。もう一つ、修道女たちの歌が重なるシーンはどこも『マルケータ・ラザロヴァ』を思い出させてくれた。最後に一つ、最初の悪魔祓いでヨアンナに憑いた悪魔が"あ、今あいつ出ていったよ"って言ったのは吹いた。二次会途中で帰った人かよ。

ヨアンナに憑いている八体の悪魔、Behemoth、Balaam、Isacaaron、Gresil、Aman、Asmodeus、Leviathan、Dog's tailはよく分かんないし、日本語訳だと最後のやつ諦めたのか"ザパリチカ"って読みをそのまま当てていた(よく聴くと発音はザパリチカでもないんだけど)。まぁ確かに分からんな。
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