Ren

くれなずめのRenのレビュー・感想・評価

くれなずめ(2021年製作の映画)
3.5
共感性羞恥虐殺映画。かつての青い時代に輝いていた存在を中心に描かれる、言ってしまえばホモソーシャルの "男の友情" 物語。

なんと言っても確かな演技力を持つ若手〜中堅の役者が勢揃いしたこの座組み。邦画ファン全員が「私のためのキャスティング!」と勘違いしてしまいそうな顔触れ。

『あの頃。』や『佐々木、イン、マイマイン』を想起する人は少なくないはず。どちらも男性たちの "かつて" と "今" の青春を切り取った傑作だったが、前者はハロプロ後者は佐々木という存在が彼らの架け橋となっていた。本作はそこのところの仕掛けがかなりぶっ飛んでおり、好みが分かれるとしたらその部分かな。
松居監督の過去作は『私たちのハァハァ』しか観られていないけど、こんなにフィクショナルな映画を撮るんだ!と面食った。ラスト20分はずっと、やめて置いていかないでと懇願しながら観ている感じ。

画がバカバカしすぎる反面、そっと背中を押してくれるような温かさも兼ね備えている。別れを経験した人間はいつか前を向いて生きていかないといけないけど、センチメンタルになって立ち止まってる時間があったっていい、って言ってくれるだけで救われる人も多いのではと思う。なかなか前に踏み出せずにいる時間を尊いものとして見せてくれたことに拍手。
ハッキリしろよ、は何度も聞いたセリフだけど、ハッキリさせようとすんなよって意外と聞いたことなかったかも。

「暮れなずむ」とは日が暮れそうで暮れないことで、つまり『くれなずめ』はその命令形。今年一番、エンドロールで物語とタイトルを結び付けて余韻に浸れた映画だった。

集団わちゃわちゃダンスに謎のカタルシスを覚えたのなんて『リトル・ミス・サンシャイン』以来。あっちゃんと城田優もいい味出してたなあ。
Ren

Ren