『ジャッジ!』『世界から猫が〜』『帝一の國』『恋は雨上がり〜』の監督なのか。
言われてみれば、ここまでの幅の広さがここ1点に集約されました、そして新たな幅を産みました、みたいな映画。
面白かった。
フジテレビと東宝の映画でここまで猟奇的に描けるとは何事か、と思った。
猟奇的なのもさることながら、未成年が結構ガッツリ悲惨なことになってて、何かあまりここまで徹してるTV局映画もない気はする。
画力はスゴいが、人柄が良すぎるのか、サスペンス系のマンガを描き切ることがない漫画家。
そんな彼がちょっとしたデッサン中に恐ろしい猟奇殺人の現場に遭遇してしまう。
それをキッカケに、彼の才能が開花し、その事件やその犯人像を頼りに描いたマンガが空前の大ヒット、めでたしめでたし。
かと思いきや、その殺人鬼が、今度は彼のマンガを模倣して殺人を繰り返す。
漫画にリアリティがないことで芽が出なかった漫画家の漫画がリアルな猟奇殺人となっていく。
これ、なかなかスゴい企画だな、と。
と思ったら、川村元気さんだった。さすが。
マンガって週刊誌の後に単行本が出るのだが、その辺のタイムラグと言うか、「今はどれを連載してる?」みたいな漫画の時系列が少し不透明だが、まぁそこは。
菅田将暉、この人、役者としてスゴい。
数々の作品に出まくってるけど、その役の普遍性を遺憾なく演じきってると言うか。
今回の漫画家にしても、漫画家にしか見えない。当たり前だけど。
何を演じてもその役に染まれる力ってすごい。
セカオワFukase、映画初出演。
彼が最もぶっ飛んだキャラで、初出演でこれ大丈夫か、と思ったけど問題ない。
あんまりこんなこと言うのもアレだけど、今回の猟奇殺人は漫画を完コピすると言う、いわばアートとして追求する殺人犯。
だから、ミュージシャンのFukaseとある意味でその辺の親和性が高かったんじゃないかと思う。
なかなかイカれてた。
小栗旬、最近、警察役多い。
今回の小栗旬はあの味の素のCM的な優しい感じ。
だけど、洞察力と人たらしと常識に囚われない考察力の才と、いわゆる刑事の勘があって、この異常な事件にどんどん近づく。
この小栗旬の人柄がとても好き。
疑いまくって周りをうろちょろはするけど、漫画家のことも慮ったり、そもそも漫画というものを愛してたり。
着目点鋭い刑事の前に、漫画も好きな心のある1人の人間だよ、感が素敵。
だから、だから!そうくるか!ってのはなかなか印象的。
最初のタイトルコールまでの流れや、漫画の最終話を書いてクライマックスへ突入する山場はかなり引き込まれた。面白かった。
途中も、売れない漫画家とイカれた殺人鬼、どこで折り合っていくのか、を、まさかの「四人家族を幸せの単一単位とするコミュニティ」なるまったく別角度の要素を入れ始める。
最初は「は?」って思って、よく分からない話になっていくのか、と思ったら、それがこの漫画家と殺人鬼を表裏一体で結ぶ展開に。
漫画家が殺人鬼と出会い、会話も交わしていき、少しずつ関係性がズレていって、漫画家の心が揺れていく。
自分が漫画家としてどうしたいのか、的な心情も見どころ。
ただただ残虐なだけではなく、ただただ刑事が犯人捕まえる話でもなく、ただただ漫画家が苦悩するだけの話でもなく、フィクション、ファンタジー感が過ぎるわけでもなく。
「この世の中はおかしい。あんな殺人鬼が普通に暮らしてる。」
中村獅童が言ってたこれ。このセリフがなかなかリアリティがあってゾッとする。
話も描写もセンセーショナルだけど、かと言って「こんなの映画だからでしょ」とも思えないなんか変な現実感も味わえる作品。
高畑充希、ホント良い嫁。