むぅ

キャラクターのむぅのレビュー・感想・評価

キャラクター(2021年製作の映画)
3.7
『セブン』か?

オープニングがおそらく『セブン』のオマージュになっている。

「もう一滴も出ない!」
学生時代、演劇部だった。
スタッフの私が部室で作業をしていると、横にいた脚本・演出の先輩が叫んだ。
まだ1年生だった私は震え上がった。
「....だ、大丈夫ですか?」
「もう何書いても何かのマネな気がする。もう、むぅが書いて」
「いやいやいやいや」

何かを生み出す事は大変。
何を書いても何かのマネになる、という先輩の切羽詰まった言葉は印象的だった。

漫画家として売れることを夢見る主人公。画力はあるのだが、登場人物のキャラクターがどうしてもリアリティに欠けることがネックになりチャンスを掴めない。
ところが、一家4人惨殺という殺人現場に遭遇し犯人を見てしまったことで、彼は自身の漫画のキャラクターに何かを"投影"させていく。果たしてそれは犯人の影なのか、それとも.....。

自分の中に潜む"狂気"や"悪"。
突きつけられるだけでも怯むのに、それを創作で形に出来る人は凄いと思う。私は出来れば向き合いたくないなと思ってしまうし、実際見て見ぬ振りをすることもある。
サイコパス♬と思って気楽に観始めたのだが、"創作"について考えさせられることになった。

最近、これどんな映画だったかな?と思い過去のレビューを読み返すことがあった。
あ、真似してるな。
時間が経ってから読み返すと、自分が好きな作家の文体に寄せている。書いている時は気付かなかった。

自分が見てしまった殺人現場、そこを描くことから始まった主人公の漫画。ヒットすると、今度は犯人が漫画で描かれる殺人を模倣する事で話が進む。
確かに「ん?そんなに上手くいくか?」と突っ込みたくなる描写があるにはある。けれども、それで正解なのかもしれない。
何故なら、その犯人が後半に起こす殺人は"リアリティ"に欠けることがネックな主人公が描くものを模倣しているのだから。
そう気付いた時、おぉ!やるじゃないか!と思った。
上から目線である。
創作に対するリスペクトどこいった。

「外の空気吸ってくる」
そう言い残して、あの日先輩は消えた。
「あれ?どこ行った?」
「多分、逃亡しました」
もうちょっと言い方があった、という反省とともに先輩元気かなと思った。