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キャラクターのSSDDのレビュー・感想・評価

キャラクター(2021年製作の映画)
3.8
画力が非常に高い男は漫画家のアシスタントをしながら、自身の作品で生計を建てることを夢見る。だが新人賞を受賞することはあれど男が描く漫画にはキャラクター性が乏しいと評価され、最後と臨んだ出版社の担当への持ち込みも酷評されてしまう。
アシスタント業も最後にと出社するが、幸せそうな家庭の一軒家をスケッチしてきてくれと頼まれて外出する。
男は適当な家を見つけてスケッチを始めると家の扉が開き、すぐに閉まった。
周囲の家から音楽がうるさいので警察を呼ぶと言われ、仕方なしに家に入ると…。

あまり過度な情報は必要ないので概要はこの辺で。

漫画家が遭遇する出来事と、描き出したことが一致し始めるというオカルトなシナリオで紹介されていますがなかなか秀逸な作品でした。

サイケデリックなネオンの飲み屋の雰囲気や、警察の重苦しい雰囲気、事件の凄惨性の描き出し方、漫画の異常な画力などシーンごとの雰囲気や映像は素晴らしい。

オリジナル脚本で日本のサイコスリラーとしては素晴らしい作品を打ち出してくれた感じがありますね。







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ここからネタバレ


途中までは自分が書いた漫画の殺人が現実になるために両角という存在を作り出し、
現実には存在しない殺人鬼を具現化させてしまったのか、自身が演じているのかわからないような曖昧さに引き込まれる。

前者だったらファンタジーものだし、後者はありそうなサイコサスペンスになる。

しかし本作は殺人を目撃して模倣して作り出したキャラクターを犯人が見る。
漫画で次に起こる殺人を犯人が模倣するという逆の展開になっていくというのが斬新だった。

警察は真犯人を知らないことで漫画が予言のように次の事件と当てはまることに漫画家以外に接点を見出せないのも、無理もなく、柔軟な発想を持っていないと捜査が進まないのも納得がいく。

柔軟な発想を持った刑事のキーマンが死ぬとは思っていなかったのでかなり驚いた。
好感度を持たせておいて殺すとはこの脚本家も脚本の中で殺人を楽しんでいるじゃあないか。

とはいえ主人公の漫画家、殺人犯、辺見という殺人犯の3人はキャラクターが見えなかった…。

さらっと話されていたが犯人の両角は、元々は少年犯罪の大量殺人犯の辺見のファンで模倣したが、逆に自分が超えて立場が逆転して両角のファンに辺見がなっている。まるで3人で感染してより過激な思想を持ったものに傾倒してしまうように。

没個性的で何者でもなく、認められてこなかった3人だから共鳴し、互いの求めるものが理解でき、殺人という狂気に取り憑かれたのだろうか…。

最後は何者かを人に問う両角。
4人家族を信仰するコミューンで、5人目として不要とされた戸籍も持たぬ人間は、何者ともされていなかったことで歪んだ執着心を持ち、幸せの対象を破壊したかったのだろうか…。

そして漫画家は取り憑かれたこの両角の思想を持って自身の家庭を築けるのだろうか…。

勧善懲悪で終わるが、余韻を残す終わり方は好みですね。


本当個人的な好みですがミッシェルガンエレファントというバンドに昔から好きなのですが、世界の終わりと名乗るバンドを見た時にレンタル屋で視聴した瞬間に拒絶してしまいました。

世界の終わりはミッシェルガンエレファントの代表的な曲でロックなので全く異なる世界観に怒りすら覚える始末。

若かったのもありますがファンやら信仰というものは厄介なものですね。
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