コスモス

SLEEP マックス・リヒターからの招待状のコスモスのレビュー・感想・評価

5.0
↓今回のレビューは半分エッセイのようになっています

日本人であまりマックス・リヒターを知っている人は多くないだろうが、私のなかではハンス・ジマーと同じぐらい好きなミュージシャン(映画音楽家)の一人である。ちなみに個人的に映画「メッセージ」の彼が作ったサウンドトラックがお気に入り。

私が思う彼の音楽の特徴はとても内省的な点。例えば、先ほどあげたハンス・ジマーや最近の流行りのポップスやロックは音楽が主導となって私たちの感情を揺さぶり、感動させる。しかし、彼の音楽は基本的にとても穏やかだ。だからこそ、私たち自身で自分なりの音楽の感じ方をする自由を与えてくれているように思う。

実は彼のInstagramを数年前からフォローしていて、このコンサートについては開催される前から知っていて、日本で公演があるなら行きたいと思っていた(残念ながら、というか予想通り日本では開催されなかったが…)

さて、このドキュメンタリーを見た感想はというと良い意味でとても眠たくなった。ふだん映画を見るときに「眠たくなる映画」というと、たいていの場合つまらない映画だということを意味するが、この場合は、むしろ彼の意図通りに眠たくなるほど音楽が素晴らしかった、と良い意味で解釈するのがいいと思う。

そして、映像の撮り方もこの音楽とマッチしていて、とても穏やかな色彩で、美しかった。インタビュー映像や町の風景の背後によく彼の音楽が流れていて、町中の雑踏のような何でもない映像でも、音楽との相乗効果でとてもスピリチュアルに感じた。

私はたまに内省的な気分のときに家の中や外を歩いているときに彼の音楽を聴くことがある。そうすると、いつも見慣れた風景が全く違うもののように感じる。言葉で例えるのは難しいが、あえて表現するとすれば、クライマックスを終えてエンドロール前の映画のシーンの中にいるような、または天国からこの世界を眺めているような感じ。

このようなエピソードを書くと、私のことを年寄りだと思う人もいるのかもしれない。しかし、自分はまだピチピチ?の高校生である。正直、自分が周りの高校生とはいろいろな面で違いすぎて、そして趣味や感覚が良い意味で落ち着いていて、悪い意味で年齢のわりには老けているせいで、自分自身の年齢が信じられなく感じることがある。周りの子たちの話やテンションについていけなくて、もうちょっと流行りに敏感になったほうがいいのかなと思うことがある。しかし、そういうことを考えつづけて何年も経って、私自身を周りに合わせることは基本的に不可能だし、そうするべきではないのかなと思うようになり、だんだんと周りとの違いを肯定的に受け入れるようになってきた。

で、自分自身の話を長々と書いて何が言いたいかというと、彼の音楽のおかげで忙しい日常の中でつい忘れてしまいそうなことを感じ、考えることができたということだ。どのような思索に走るかは、人によってさまざまだろう。音楽を純粋に体感したいとき、音楽について、自分自身について、人生についてじっくりと考えてみたいと思ったときにこの映画は最適なものだと思う。逆に派手なアクションやストーリー展開を心が求めているときは、まだこの映画を見るときではないのかもしれない。