このレビューはネタバレを含みます
なんだろう、この抑圧された空気
急斜面、砂丘に建つバラック
臨月の姿
手を差し伸べたくても届かない
国が違う、国が違う、国が違う、
遠くから捉えられた映像がそう言っている様な気がした。
でも…彼女に寄り添いたいと思った。
陣痛が来た、ひとり産院へ向かう若い母親
無償で出産できる産院へ…
その産院は国際的な乳児売買組織に関わっていた。
ここでも思った、国が違う、国が違う、
国が違うから、とでも思わなかったら悲し過ぎた
「私の赤ちゃんを返して」と、
泣きながら若い母親は何度も訴えかけるのだけれど…
政府が先住民コミュニティに土地権を証明する書類や身分証明書を発行をしていない
ペルー社会のシステムに彼等は入っていないのだ。
政府そのものが汚職に塗れ救いがない。
一人の母親が産んだ赤ちゃんを返して欲しい…
そんな当たり前の願いすら叶わないのかと思うと悲しくてやりきれない気持ちになった。
何も解決しないまま終わる今作は、
ペルーと言う国を知ることが先決、
今現在もこの国は何も解決していない国というのが答えなのか…と理解する他ない
今回主役に抜擢された無名の新人パメラ・メンドーサ
彼女の演技があまりに自然でドキュメンタリーかと思うほどだった、
臨月のお腹を抱え急斜面に建てられたバラックから歩く姿、
バスで産院に向かう場面、痛みを堪えながら階段を登るシーン、
大袈裟な出産シーンではなく静かで厳かにさえ感じるシーン、それぞれがモノクロでノスタルジックな映像が印象的だ。
ラスト、か細い声で
"名もなき歌"を唄うその母は、
すべての感情をなくしてしまった無表情
精神を病んだようでとても心配だ。