カツマ

Mr.ノーバディのカツマのレビュー・感想・評価

Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)
4.0
キレたオヤジはもう止まらない。降りかかる火の粉を振り払い、叩き潰し、そして、完膚なきまでにすり潰す。目覚めさせてはいけなかった。彼は平凡なオヤジのまま眠っているべきだった。しかし、残念ながら平穏という名の静寂は破られる。オヤジは最強、ただのヘタレの父親ではない。そう、眠れる獅子は豪快に目を覚ましてしまったのだ。

平凡なオッサンが実は最強だった、という設定のド派手なぶっ放し系アクションムービーがここに爆誕!ジョン・ウィックシリーズの制作や『デッドプール2』の監督などでお馴染み、デヴィッド・リーチがプロデュース陣に入るなど、『ジョン・ウィック』あたりに見られるスピード感たっぷりのアクションシーンがそのまま踏襲された作品となっている。最強のオヤジを演じたベテラン俳優ボブ・オデンカークにとっては、その長いキャリアの中でも代表作に位置付けられるハマり具合だろう。一度火が付いたら止まらない。火薬庫のようなオヤジの弾けっぷりを堪能してほしいと思う。

〜あらすじ〜

日々、会計士として働くハッチ・マンセルは、どこにでもいる二人の子供の父親で、少し冴えない中年オヤジ。繰り返される毎日を淡々とこなし、妻からはため息をつかれ、長男からは舐められながらも平和な日常を過ごしていた。
だが、そんな彼の元に現れる二人の強盗犯。長男は果敢にも犯人を羽交い締めにするも、マンセルは攻撃を躊躇してしまい、結局、長男は顔に大きなアザを作る怪我をしてしまう。しかも、窃盗犯は娘が大切にしていた猫のブレスレットをお金と一緒に強奪。自身の不甲斐なさに暮れるマンセルは、子どもたちに仇をなした犯人を追跡するも、そこで犯人の子どもたちを目撃したところで彼の怒りは霧中へと飛散してしまう。それでも、彼の怒りは収まらず、帰りのバスの中で暴漢たちが好き放題しているのを見て、押さえ込んでいた堪忍袋の緒がキレてしまい・・。

〜見どころと感想〜

正にシンプルイズベスト。デンゼル・ワシントン主演の『イコライザー』的な発想そのままに、舐められ尽くしていたオッサンが実は最強過ぎたせいで、悪役たちが全員ゴミのように抹殺されていく、というスカッと爽快系のアクションムービーである。前半はインディペンデント風味の安っぽさで鑑賞者すらも欺きながら、徐々に本格的なアクション映画へと突入していく極端な振れ幅が魅力的な作品である。主人公の後半からの無双具合がとにかく楽しいので、何も考えずに没入することをオススメしたい。

主演のボブ・オデンカークは主人公というイメージではなくて、むしろ渋めの脇役が似合うはずの役者である。そんな彼にアクションをさせる、というギャップが本作を面白く見せているのは間違いないだろう。主人公の妻役にはコニー・ニールセン、異母兄弟役にヒップホップアーティストでもあるRZAをキャスティングするなど、捻りも抜群の配役陣もナイス。そして、個人的に推したいのが主人公の父親役にクリストファー・ロイドを擁しているということ。バックトゥザ・フューチャーのドク役でお馴染みの彼は80代半ばにしてまだまだ元気。そんな彼の溌剌とした演技を見られるのも本作の醍醐味である。

主人公には家族がいて、もしかして家族に危害が及んでしまうの、、?という心配は全くの無用である。そんなヒヤヒヤした要素は抜きに、とにかくオッサンが悪党どもをぶち殺しまくる、というどストレートな設定がとにかく分かりやすく、そこには過度なギミックを必要としていない。とにかくスカッと出来ればOK、泥臭いアクションとオッサンのギャップを楽しむ。それ以上でもそれ以下でもなく、そのシンプルさが何とも気持ちの良い抜けを感じさせてくれました。

〜あとがき〜

劇場で見たかったオッサン暴走ムービーがアマプラに来ていたので早々に鑑賞!冴えないオヤジの逆襲的な楽しさがあって、スカッとジャパンの何倍もスカッとする作品です。

続編の構想もあるらしく、登場人物を増やすことで色々な工夫ができそう?今後も家族がマフィアに襲われたりしない展開に期待していきたいですね。
カツマ

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