しゅんまつもと

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園のしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

4.7
捉えてる範囲の広さと、映画としてそれを伝える手段のバリエーションがあまりに巧いうえに品があるというか、衒いがまったくないし、尚且つ「クレヨンしんちゃん」だからこそ描けることと方法であるということに面食らったというか素直に感動した。
まじでいつまでもオトナ帝国、戦国とか言ってられないというか、見てない作品もあるけれど普通にシリーズぶっちぎりで良かった。

素行を監視され功績をポイント化し生徒の階層を分ける天カス学園は資本主義社会そのものだし、とかまぁこんなことはぶっちゃけ本当にどうでもいい。そこに属するいわゆるエリートと呼ばれる生徒たちのグラデーションに注目したい。
自分が知っている今までのアニメだったら、見た目のタイプはさまざまであれ普通に良い子たちが揃っていることを想像する。
しかし本作でNo.1エリートに君臨するのは普通に勉強し、普通に気を遣って生活していたら良い子とされていた男の子だし、No.2の女の子は才能が溢れているので素行不良でポイントが引かれることすら厭わないギャルなのだ。このリアリティとバランス感覚よ。しかし、二人ともというか虐げられる側のカス組ですらこの構造に不満を唱えない。
無駄は排除され効率とルールだけが横行する世界、とても見覚えがある。

「皮肉じゃ世界は救えない」というのは先に公開されるクロエ・ジャオの『エターナルズ』の台詞だけれど、すでにそれを実践してるというか、誰かの努力を冷笑する世界なんてほんとに最悪じゃないですか。終盤にかけてある人が自分のトラウマに向き合い、自分を肯定していく様子があまりに刺さりすぎてここ最近で一番胸が熱くなった。
あなたの価値はあなたのことを笑う人になんて決められる必要はない。ってことが劇場に沢山いるこどもたちに伝わっているんだとしたらこんなに幸せなことはないし、自分にも子供がいたら真っ先に伝えてあげたい。

そこで終わっても良いものをもう一発山場を用意するとか、おれを涙で涸らそうとしているのかな?
そこで描かれるのは、ブックスマートやThe Half of Itとかとそう変わらない。いつか別れることになるとしたら、友情に意味はないのだろうか?いや、決してそんなことはない。ということを言葉なんて使わずに行動と二人の位置と、決着の付け方で示してみせる。はぁ。。完璧だ。。

いやね、こんなことクソ真面目に書いてるのもアホらしいんですよ。だって「クレヨンしんちゃん」ですよ?普通にめっちゃ笑うもん。この歳になっても普通に笑う。クレヨンしんちゃんって謎のディテールの面白さだったんだなぁ。だって野原家に「色即是空」って書かれた掛け軸があるんすよ?ひろしが飲んでる缶ビール「半生」ですよ??学園長の名前「膨萩椋美(ふくらはぎむくみ)」ですよ????笑うでしょこんなん。